第2話⁂陽葵の17年間⁂


『セルフィッシュ星』のお姫様に転生した陽葵だったが、両親である王様とお妃様が相次いでこの世を去ってしまった。

 この先一体どうなってしまうのか?



 その前に、前世である地球での17年間を振り返ってみよう。


 陽葵が誕生した2000年は、日本では金融機関や企業の経営破綻が相次いだ。

 当然の如く吹けば飛ぶような零細企業の〈アサミ電産〉も窮地に追いやられ倒産寸前だったが、あいにく祖父が存命だった為、この難局は乗り越えられた。


 だが……陽葵が小学4年生の時に祖父が他界、一気に経営は傾き倒産してしまった。


 それでも…この有名私立小学校は入学金も授業料も寄付金も破格である。

 良家のお坊ちゃまお嬢ちゃまが殆どで、ましてや中学校からはお弁当なので、それこそ見栄の張り合い。まるで高級料亭か高級フレンチのパンフレットを見ているかのような光景に、貧乏家庭の陽葵は意気消沈。


 貧乏のどん底に突き落とされていた浅見家なので、授業料だけでも大変なのにお弁当に力を入れるなんて、とんでもない話、真っ先に節約したいのが食費。


 いつもご飯の真ん中に梅干しの、日の丸弁当が恥ずかしくて陽葵は必死で噓を付いていた。

「お弁当忘れたから売店で買って食べるね」

 そう言ってトイレで白米に梅干しだけの弁当を食べていた。


 それでもいつまでも噓を付き通せないので、思い余って両親に相談した。

 すると……見栄っ張りな両親が良いアイデアを出してくれた。


 ある日どういう訳か、両親に連れられ100均に行った。

 そしてある場所に連れて行かれた。


 そこは何と……玩具スペース。

「ホ~レ陽葵!ここにある、おままごとの高級料理を、お弁当に入れて行けば貧乏人だとバレないだろう?」


「ワ~本当だ!」

 こうしてやっと……教室で食べれるようになったが、実際の弁当の中身は以前と全く一緒……ただ見栄を張る為にオモチャの具材で誤魔化しているだけ。


 弁当の中には100均で買って来た、おままごとのプラスチック製のいくらやステ-キなどを、豪華に盛り付け持って行った。それでも…すぐにバレるのでは?


 イエイエそれは大丈夫…食事時間は友達と少しだけ距離を置いて食べていたので……

「陽葵ちゃんのお弁当豪華ね」


「そう?有難う。母が食材を高級デパ-トで買って来て作ってくれたのよ。へへへ」

 この様な裏工作をして当座しのぎをしていた。


 ◆▽◆

 最近父が……何やら……胡散臭い行動を取っている。

 なけなしの貯金を切り崩してやっとの事、家族4人が生活していると言うのに、1ヶ月以上家を空ける事が度々。


 一体どこに行っているのか?

 

 母がたまたまATMにお金を引き出しに行ったのだが、貯金金額が底を付き始めていた。これは一体どうい事?

 

 怒り心頭の母は、携帯も繋がらない音信不通の父親に連絡を取ろうにも、どうにもならない。

 その時爆音と共に……これまた父親に輪をかけた、とんでもない問題児が帰って来た。


 ”ブルブルブルルルルル” ”ブルブルブルルルルルブルブルルルルル”

 うるさい爆音とともに帰宅したのは、兄優馬。


 優馬が小学校お受験の頃は、祖父も健在で家庭も潤っていたので、可愛い跡取り息子、お金に糸目を付けず、家族一丸となってお受験に立ち向かったのだが、どうも……父に似たせいか?成績が振るわず、どこの私立も撃沈。全滅してしまった。


 子供に想像以上の期待を膨らませていた父にすれば、息子の不甲斐なさに口を開ければ不満タラタラ。

(それでも…勉強がダメでもピアノ教室やダンススク-ルに通わせれば、また別の才能が開花するかもしれない)そう思い、早速ピアノ教室とダンススク-ルに通わせたのだが、元々不器用だった事も有り早々にピアノ教室は辞めてしまった。


 更には有名なダンススク-ルに通わせたのが災いしたのか、県大会で優勝する生徒もいるほどのスクールなので、ともかく厳しい。それなのに…先生の言う事を聞かないし、他の生徒に度々ちょっかいを出すので、とうとう辞めさせられてしまった。

 

 子供に多大な期待を寄せていた父親はカンカン。

「こんなクズが俺の息子とは恥ずかしくて外も歩けないワ!春子お前に似たんだろう?」

 妻の春子を責めているが、実は父の友樹が子供の頃優馬と同じ道を辿っていた。

 実は…子供の頃の父友樹は、落ち着きのない……習い事もすぐに辞める、更には成績の振るわない息子だった。


 それでも…優馬も何を言われてもお構いなしで、公立小学校に元気に通い出したのだが、今度は妹陽葵の小学校お受験がやって来た。兄とは違い妹陽葵は、お受験をことごとく成功させ、私立の最高峰有名私立に悠々と通いだした。


 勇馬は小さい頃から妹と比較されて、大きなコンプレックスを持っていたが、益々開きが出来て優秀な妹が煙たくて仕方ない。


 自分と妹では月と鼈ぐらい違う事は十分わかっているのに、それなのに…父親から散々「妹の爪の垢でも煎じて飲め!」と侮辱をされてすっかりグレてしまった優馬。

 

 今現在は暴走族として、オートバイや乗用車を乗り回し爆音を立て、江の島や鎌倉などの行楽地周辺や、千葉市の幕張周辺などを物凄い爆音を立て暴走している迷惑極まりない暴走族の総長に君臨している。


 妨害や騒音を伴う無秩序な運転をする反社会的集団で、中学生の卒ラン文化をモチーフに、デザインした不良ファッション特攻服を着て、髪はロン毛の金髪と言う出で立ちにグラサン姿は、まさしくイカツイ反社会的集団そのもの。


「もう…そんな姿で家の周りをうろつかないでよ~みっともない!」


「うるせぇ!ババア!金!金をヨコセ!」


「チッ、何だい?そのものいいは!それから…そんな金がどこに有るんだい?父さんが金を全部銀行から下ろしちゃって~?あの出来損ない!お前お父さんの居場所知らないかい?」


「アアア嗚呼アアア嗚呼!俺知ってる。カジノでギャンブルにハマっているらしい」


「エエエエエエエエ————————————ッ!カ ジ ノ?ユルサナイ!殺してクレルワ!」


 

 ◆▽◆

 だが……貯金は使い果たしたが、カジノで大儲けして海外の複数の銀行に大金を預けている事を知った妻春子は、土壇場で夫の底力を知り見直した。


 こうしてお金と時間が出来た事によって、益々陽葵に期待が集まり期待に応えようと頑張り過ぎて過労死してしまった。


「ああ俺が不甲斐ないばっかりにウウウウッ(´;ω;`)ウゥゥ」

 兄優馬が泣いているが、時すでに遅し。


 こうして『セルフィッシュ星』のお姫様として転生したが、今度は全く真逆の怠け者になってしまった陽葵。


 陽葵にはどんな未来が待ち受けているのか?





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