怠け者お姫様☼陽葵の秘密の冒険!

あのね!

第1話⁂夢⁂



 浅見陽葵は都内でも指折りの進学校に通う17歳の高校生。


 父親は祖父から譲り受けた電気部品工場を細々と経営していたが、度重なる景気の悪化と、元々の怠け癖がたたり敢え無く倒産。


 それでも…運のいい男だ。ギャンブル狂の父は隠し持っていた資産で、ラスベガスカジノで、ルーレットやブラックジャックなどのゲームで、大金を手に入れていた。


 大金を手にしたは良いが、この男、会社倒産の憂き目に遭い時間はたっぷりある。自分の無しえなかった夢を、子供達で叶えようと必死になっている。


 自分は無能なくせして夢と理想とプライドだけは人一倍。

 

 ☆

 「ひまり」非常に可愛い名前であるが、お日様や太陽のようにいつも明るく人を照らしてくれるように「陽」と、葵と言えば、かの有名な江戸幕府初代征夷大将軍徳川家康家の家紋「葵」を思い出す方も多い事だろう。


「水戸黄門」でおなじみの「家紋」だ。

 

 父親が時代劇マニアで、特に徳川家康に心酔していた事から、いつも明るく徳川家康のような立派な人間になってくれるようにと「ひまり」と付けた名前だ。


 自分は怠け者で、殆ど母に経営や事務処理を丸投げしていたくせに、『ナナ ナント!恐れ多い事を!』子供たちに、とんでもない大それた夢を切望している。


「徳川家康のような立派な大人になってくれ!」

 自分を棚に上げてとんでもない事を!


 陽葵は名に恥じぬよう、父の希望に応えようと必死で努力を重ねている。

 幼稚園からクラシックバレエ、ピアノ、英会話教室、学習塾と塾通いに追われ、入学した小学校は、日本有数の偏差値最高峰私立有名小学校で、やっとの事お受験を勝ち取り入学出来た。


 だが……父の希望に応えようと自分の実力以上に頑張り過ぎたせいか、ある日突然思いも寄らない睡魔に襲われ深い眠りに陥ってしまった。



 ☆★☆★☆★


 目を覚ますと……何と……そこは……無重力空間になっていた。

 そして…近未来風の……ドーム型お城の中をプカプカ浮いていた。


 どうも……自分の器以上に努力をしたせいで、その努力と苦労が祟り過労死してしまったらしい。


 それはそうだろう?あんな怠け者で、ギャンブル依存症の父親から生まれた娘が、いくら何でも、時の将軍徳川家康と同等になる訳が無い。あんまりにも程がある。



 

 ◆▽◆

 陽葵が暮らすこの『セルフィッシュ星』(日本語:わがまま星)は、ひょうたんの形をした星で、無重力空間「エンペラーシティー」と、そして…地球上とさして変わらない環境空間「シチズンシティー」に別れて、ひょうたんの上の部分が無重力空間だ。

 

「王様シティー」と「市民シティー」という事になる。

 

 その無重力空間「王様シティー」は、巨大な透明な膜で覆われて…この星のお城の王様一族、更には役人や使用人たちの居住空間となっていて、みんなプカプカ浮きながら作業に従事している。


 だが……この『セルフィッシュ星』の城以外の「市民シティー」の住人は光、温度、空気、水分、養分が備わった地球と同じ環境下で、ただ、ただ、奴隷のように黙々と産業、家畜、農作業に精を出している。

 

 そして…「市民シティー」の住人が商いをして、この国の色々な製品や作物を売りさばいた金額の50%を、税金として王様一族が搾取している。


 要は王様一族の為の国家と言っても過言ではない。


 だから…お城の役人や使用人以外の「市民シティー」の住人は、地球上と同じ環境で自由自在に働けるような環境化に置かれ、お金と作物を生み出す道具となって居た。


 ◆▽◆ 


 朝も早くから王様はこの星の政策で走り回っている。


「オイ!みなの者、今年はジャガイモが豊作で、ポテトカットがえらい売れたらしいが、売り上げが思うように反映されていない!あ奴らピンハネしやがって——―ッ!許せぬ成敗しろ!」

 「ハイかしこまりました」

 

 女王様もこのお城の使用人たちに必死になって指示を出している。

「食べやすいように、食事はあんにしてトロミをつける様に!」

 

 要は手を動かさなくても浮遊して、口を大きく開けて飲み込めば済むから楽という事なのだ。この様なものぐさな王様一族なので最近は巨体な……まるで牛のような体型になってしまった。

 それでも…使用人たちは、無理難題を言ってくる女王様の指図で懸命に、ハヤテのごとく風を切って浮遊しながら、忙しく食事の準備や後かたずけに翻弄されている。

 

 それはまるで、動画でも見ているかのような違いが鮮明に炙り出されていた。動画のスローモーションが王様一族で、倍速が使用人たち、それはまるでコマネズミの様にコロコロと慌ただしく動き回っている。

 

 ◆▽◆

 陽葵姫も困った事に、スッカリ怠け癖が板についてしまった。

 お城のキッチンで、ばあやに支持を出している。


「イザベル?アイスクリ-ムを持って来ておくれ!いつもの様に、子分けに分けて浮かせてチョウダイ!」


「ハイ!お姫様」

 すると……アイスクリームがプカプカ浮いて来た。手を使うのも面倒なので小分けになったアイスを、3回ぐらいに小分けに浮かせて貰い「パクリパクリ」


 この様な、ものぐさな態度に最近は、地球に居た頃のスリムな体型はどこえやら?

見る影も無くなり巨体がぷよぷよ浮いている。





 ◆▽◆

 それでも…陽葵は、何故『セルフィッシュ星』の……それも……お姫様に転生する事になったのか?


 それは……ある日の事だ。

 この星一の有名占い師で、王族一族専属の占い師がひょうたんの紐の部分に当たる、紐の形をした池に魚釣りに行った時の事だ。


 その時に木の枝に……何か……?大きな動く物体が引っ掛かっていた。慌てて……近付いて見ると……『セルフィッシュ星人』と全く同じ生物が木の枝に引っ掛かっているではないか?


 そして……この占い師レオナは、陽葵を見た瞬間、驚きと興奮で自分を抑えることが出来なくなった。


「この娘は『セルフィッシュ星』に幸運を招く運気の星の持ち主だ」

 

 それは……何と……首筋にひょうたんの形をした赤アザと青アザが、不吉な光を放っていたが、このアザが幸運を……?

 こうして……何はともあれ……お城に連れ帰った。


 お姫様を授かることが出来なかった王様とお妃様は、丁度好都合「幸運を招く運気の星の持ち主」である、この陽葵を大歓迎で姫として向かい入れた。


 ◆▽◆

「この娘は『セルフィッシュ星』に幸運を招く運気の星の持ち主だ」

 そんな占い師レオナを信じて、陽葵を向かい入れたは良かったが、ズボラが祟ったのか?運動不足と食べ過ぎなのか?王様とお妃様は相次いで命を落としてしまった。


 一体何故?

 これから陽葵はどうなってしまうのか?











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