第13話 新スキル
「――レベル、アップ、2605……2620……」
『神測。モンスターとの距離、前方30メートル。右前方5メートル。頭上5メートル。背後1メートル――』
あれから3時間。
ケルベロスたちの姿があった20階層を後にし、次の階層へ下ると、そこではおびただしいほどのモンスターたちが蔓延り、しのぎを削っていた。
こうしてみると、20階層は縄張りの入り口ということもあって、ある程度、オロチ本体が尻尾と呼ばれていた竜のために、監視役として暮らしやすい環境を作っていたのかもしれないと思える。
「まるでモンスター地獄。そう言えばケルベロスの異名は、地獄の門番、か……。ふ、言い得て妙だ……なっ!」
しばらく戦闘を行っていたからか、モンスターたちは徒党を組み始め、タイミングを合わせて攻撃を開始。
攻撃を避けつつこちらは迎撃を開始。
モンスターたちの強さはどいつもこいつもケルベロスと同等かそれ以上だが、今の俺からすればとるに足らない。
唯一注意を払わなければならないのは不意打ちだが、これに関しては『神測』を使い、モンスターとの距離をこまめに測定してやれば問題ない。
むしろここまで一方的だと、戦闘と言うよりも殺戮の方が正しいかもな。
「ただ、この数は体力的にきつい。いっそのこと魔法で一掃……いや駄目だ。『オロチ本体』が未だに移動中だからといって、油断しているとまた魔法を介して……。場合によっては余計ひどい目にあいかねん。……あの人みたいに、対多数向けのスキルを持っていれば良かったのだが――」
『――2700にレベルアップ。これまでの戦闘経験から、斬撃を1度に2度繰り出せるスキル、
通常攻撃が強攻撃で2回攻撃の探索者……。
俺が求めていたのは全体スキルだったのだが……。
まぁ物は試し、か。
『
俺はできるだけモンスターに近づいて、新しく取得したスキルを心の中で呟いた。
すると、まるで剣を持つ腕がもう1本増えたような感覚が生まれ、薄くだが、2本目の剣と3本目の腕が視認できた。
そのままの状態で剣を振ってみると、攻撃の対象であるモンスター、バフォメットの強靭な角目掛けて2本目の剣も全く同じタイミングで振り下ろされた。
結果角は見事に折れ、バフォメットは絶叫。
このステータスであっても、角だけは何度か弾かれてしまっていたから、もう角に攻撃するのは無駄だと思っていたが……攻撃が重なっただけでまさかここまで威力が高まるとは。
「……それに効果は継続。動かし方も位置も意識を集中させれば変更できる。つまり……」
『神測。
「この範囲内なら右も左も上も、あらゆる方向に2本目の剣を振りかざせる。例えばこうして挟み撃ちを仕掛けてきた場合であっても……」
剣を1回振っただけで、簡単にバフォメットの死体が2つになった。
少々地味だが、これで狩り効率は2倍――
「――う、がらら……」
折角徒党を組んだところで、複数攻撃されては挟み撃ちも何も意味がないと察したのか、バフォメットたちは少し距離をとりその場に座り込むと魔法を放つためであろう、詠唱を開始。
それを邪魔させんとばかりに、ゴーレムが俺の前に立ちはだかった。
魔法による攻撃がどのようなものか分からない以上、さっさと阻止しないといけないのだが……。
ゴーレムを掻い潜り、バフォメットたちを殺し尽くしても、地面に浮かび上がった魔方陣は消えることがなかった。
ただ殺すだけじゃ駄目……。そもそも発動してしまうと阻止できない? いや、発動はまだだった。奴らがしていたのは準備に過ぎない。なら、それは阻止できる。
きっと条件が……。ってそうだった。こういうときの『神測』だよな。
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