第8話 2200
「その反応……。やっぱり使えないみたいね」
「使えないどころか初耳だ。それは最上級よりも1つ上の――」
「一応2つ上という位置付けよ。その間に神話級ってのがあって、主に威力が高いもの。滅級は威力というより、使われた場合、個々や団体の精神、或いはそれらの生活を長期的に犯す危険性があるもの。対処方法やなんかでもランクは変わってくるから、魔法っていうのは一概にランクが高い方が強い、とも限らないのよね」
「そう、なのか?」
「そうなの。ちなみにだけど、私の縄張りに仕掛けた魔法は特定の神話級魔法でのみレジスト可能。同ランクの滅級魔法でもこの魔法は上書きできないの」
「……随分と丁寧に教えてくれるんだな」
「どうにかして、その神話級魔法を特定できたとして、どうせあなたには無理ってわかってるからね。レベル500程度なんてそれだけ、ひよっこもいいところなの。私を慎重にさせるためには……せめてレベル2000相当の実力が必要かしらね」
苛立たせるような言い回しだが、それが間違っていないのだと心の底で思ってしまっているから、言い返せない。
人間の言語を流暢に使いこなせる、滅級魔法の使い手であるモンスター。
しかも、魔法陣から覗かせる指の形から察するに、このモンスターは人型を維持しており、物語のボスといわんばかりの雰囲気を醸し出している。
今日まで馬鹿にされてきた俺なんかが、付け焼刃で勝てる相手ではない。
勝てるのは声の主と勘違いさせられていた、目の前の竜だけであって、声の主には到底及ばない。
であれば……。
「そんなひよこなんかと、お前が意思疎通を図ろうとしたのはなんでだ。それも、こんな手駒を使って」
「あら。急に物分かりが良くなったみたいね。私、そういう奴嫌いじゃないわよ」
「茶化すな」
「……。そうね、じゃあまず1つ目。それは単純に興味。人間っていう非力な種族が私の力を借りられる程のステータスを身につけられたのは何故なのか、それが気になったから。2つ目は……人間にある物の使い方を教わりたかったから」
「教わりたかったって、一体何を……」
「これよ」
魔法陣からその端部分だけが、見えた。
全体の形は把握できないが、この液晶画面……これは間違いなくスマホ。
もしかするとこいつ。
「これをどこで手に入れたんだ」
「前回人間の住むところに尻尾の何匹かを送り込んで、そこで拾ってきたものらしいのだけど……うふふ、やっぱり知ってるのね。これのこと」
スマホを見せられた瞬間、その可能性がすぐに頭に浮かんだが……。
尻尾の何匹かを送った、か。
まさか俺たちが見たことのある、あの『オロチ』が、このモンスターの一部でしかなかったなんて……。
死人こそ奇跡的に0だったが、あの戦いでどれだけの探索者が被害にあい、どれだけこいつを殺そうと躍起になってきたことか。
……。もしそんな仇モンスター、こいつを俺が倒して地上にその死体を持ち帰ることができたならば……。
一か八か、掛けてみるか。……『神測』
『――神測。対応適正レベルの測定を開始――』
「もし! これについて詳しく教えてくれるなら見逃してあげてもいいけど」
「……。嫌、だと言ったら?」
「殺す。いえ、よくよく考えればあなたを殺したところでただ鬱憤が晴らせるだけよね……。だったら無理やりにでも教えてくれるように……一先ず半殺しにしてあげる」
「……それはしんどい。それを受けるくらいなら、お前にそれの使い方を教えてやってもいい」
「え? やけに素直ね。ほんと怖いくらい」
「ただし、条件だ。それを教える前に、だな。……俺にお前たちの首をくれ」
「は? あなた、何を言ってるの?」
「それは駄目ってことか? であれば俺が直接首を切り落としにいかないと、だなっ!」
「!? 指を、掴まれた――」
『対応適正レベル4000までレベル補完経験値ブーストが開始。事前通り、モンスターとの対話、身体各部位への接触、その他もろもろの行為においても経験値が獲得されるよう変更。過去の情報を遡り、その際発生したであろう経験値と、激しくレベル差のある対象の指を掴んでいることにより発生した経験値が反映。レベルアップ。並木遥、レベル2200』
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