第2話空を見上げて

いつからそこにいたかは知らないがいつの間にかそこにいた。そしていつまでここにいるかも分からなかった。もしかしたら一生このままだし、そうじゃないかもしれない。今わかることは何も分からないだった。

視界は真っ暗。体は動かない。何も出来ない

しかし、彼は絶望しなかったのである。なぜなら何も知らないのである。喜びも知らなければ、悲しみも知らないのである。最初からそうであり、これからもそうである。それが当たり前なのだ。


突然の事だった。初めて体が動いたのだ。

いや、違う。自分ではなく全てが動いているのである。

大きな音が鳴った。

暗闇が消えた。

光。

数多ある光が彼を照らし出した。

体は動かない。でも確実になにかが動き出していた。止まらない速さで動き続けるそれに自分自身が困惑し、しかし光に魅せられてしまい、考えを吸われていく。

光を反射するかのように彼の目も輝いていく。

彼が初めて知ったのは星であった。

彼が星を知り、またもや月日が流れて行った。やがて彼は動けるようになった。

しかし、星を眺め動き出さないのであった。

何も知らない彼が星を知り、星を眺めることで満足していたのだ。しかし星を見続けていた彼も動き出したのである。星を味わい尽くしてしまったのである。最初は感動したそれも数多の時が流れるうちにやがて暗闇を眺めていた時と同じ気持ちになってしまったのである。

もう眺めるだけでは満足できなくなってしまっていた。そう思うと体は自然に動きだしていた。またあの時の感動を得ようと動き出していたのである。しかし彼はまだ幼いのである。故にその事実に気づけず、今はただ新たな景色を見ようとしていた。

そして彼は驚いたのだ。視線を落としたその先には新しいがあったのである。

困惑しながらも体の動かし方はわかるようで、足を動かし、頭を左右に向けてみれば、どんどん新しいが流れ込んでくる。

もうたまらない気持ちになり、彼は走り出した。走れば走るほど、興奮してしまっていた。

とうの昔にきれていた息にすら気づけず走り続けていた。やがて動けなくなり、倒れた。

そして体を起こそうとして上を向いてそれを見てしまったのだ。

そう楽しみ尽くし絶望した星が新たな光を連れてきたのである。

彼は涙を流し放心としていた。

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