第5話 フワちゃん
その学校の保健室には、可愛らしい熊のぬいぐるみが置いてあります。
何でも震災があった時に避難してきた人が忘れた物らしく、未だに誰も取りに来ていない為、1階の保健室に置き、窓から見えるようにしてあるようです。
そんな熊のぬいぐるみに名前を付けたのが、良く保健室を頼る病弱な女の子でした。
そんな女の子が卒業してから2年後の事です。1人の男の子が突然、校内で倒れ保健室に運ばれました。
ダメ!早く救急車を呼んでください!
運ばれるなり、保健室の先生は慌ただしく叫びました。
すぐに救急車が来たのですが、男の子は心臓死してしまった。とゆう事があったそうです。
そして、別の日、学校の保健室には6年生のSさん(女の子)が来ました。
体育の授業前に体調不良になってしまったようです。
いらっしゃい。今日はどうしたの?
Sさんは吐き気と頭痛がある事を先生に話しました。
保健室の先生が体温計を取り出し、渡しました。
んー、熱は無いみたいね。少し、ベッドで休んでいく?
はい。
そうして、女の子はベッドに横になると先生の机の上にある熊のぬいぐるみが気になりました。
先生、あのぬいぐるみ、可愛いね?
うん。あれねー、アタシが来る前から、あったのよ。何でも忘れ物らしくて、中々、捨てられないの。
良かったら、持ってこようか?
うん
と話し、熊のぬいぐるみをSさんに渡しました。
あ、フワフワ♪リボンに何か書いてある!
えっ?何て書いてあるの?
フワちゃん。だって!笑
フワちゃんかー、この子の名前かなー?全然、気がつかなかったわ~
あ、そうだ!先生、ちょっと職員室に行かなきゃいけないの!
ちょっとだけ、一人で大丈夫?
うん。フワちゃんがいるし!
と話し、保健室から出て行きました。
そして、静寂が包む保健室でSさんはフワちゃんを抱きしめ、天井を見上げながら、知らず知らずに眠ってしまったのです。
すると、夢を見ました。
その夢ではSさんは自宅に1人でいて、机にある置き手紙を読むのです。
今日は仕事があるから、机のご飯、食べておきなさい。 母より
と書いてありました。
そこで、ご飯を食べて再び自分の部屋へ戻ると、フワちゃんが勉強机の上にありました。
夢の中でもフワちゃんを抱きしめると、その時です!家が突然、グラグラと揺れ出しました。周りの本棚等が倒れてきます。
キャー!
と、そこで目を覚ましたSさんは周りを見回しました。
夢か!怖かった~
と、呟くと、
本当は、もっと怖かったんだよー!
と誰かの声が聞こえてきました。
先生?
Sさんはベッドから出ようとしたのですが、体が動きません。
あれ?
なぜか、首も動かないのです。仕方なく目だけをアチコチに動かしました。
すると、フワちゃんが胸の辺りに立ち、Sさんを見下ろしていました。
そして、口も大きく開いていたのです。
Sさんは力いっぱい叫び助けを呼びました!
しかし、自分の声が出ていない事に気が付きます。
そこにフワちゃんが語りかけてきます。
あのね!グラグラがね、凄く怖かったんだよ。一人ぼっちで誰もいなくて!
だからね、今日はお友達を呼んだの
一緒に遊ぼう♪
その瞬間、ベッドの下から無数の子供の手が出て来ました!
子供の手はSさんを掴むとベッド下に引きずり込んでいきました。
そして、保健室の先生が戻り、Sさんの様子を見ると、顔が真っ白に変化し、口を開けたまま呼吸をしていなかったそうです。
その時、フワちゃん(熊のぬいぐるみ)は、ベッド下に落ちていたとか。
そして、Sさんの死因は頭部打撃による脳内出血死とされ、殺人事件の可能性を含む捜査となりましたが、未だに未解決事件になっているようです。
落とし物や忘れ物にはご注意を!
オシマイ
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