第4話 焼子さん(後編)
さて10年後、最初に焼子さんを見たのは、卒業生の中学1年生の男子、M君でした。
その日、M君は友人と遅くまで遊び、たまたま小学校の前を自転車に乗って通りました。
時間は夜12時の事でした。
あれ?何か光ってる!もしかして!男女がイチャイチャしてたりして~♪
そんな事を考えながら、小学校の光る教室へそっと近づきました。
すると、窓越しに女の子の泣き声が聞こえてきたそうです。
そっと、窓から中の様子を見ると、スカート姿の女の子の影が、廊下に出ていったと言います。
そして、誰か気になったM君は、影を追いかけていきました。
すると、見た事もない家にたどり着いたそうです。
それから、その家の玄関にゆっくり近づいていくと、急に家が目の前から消え、耳元でアツ・イ・ヨ・と女の子の声が囁かれたそうです。
怖くなったM君はすぐに、その場から逃げ帰りました。
それから、2ヶ月後、その小学校に通う3年生の女子、紗弥さんが不思議な体験をします。
紗弥さんは、5歳の時に旅行で母と弟を事故で亡くしました。その後は父、一人で紗弥さんを育てていました。
その為、帰宅後は料理に洗濯、掃除と自分でやる女の子に育ちました。
そんな紗弥さんが、大切にしている物は生前、母が愛用していた三角頭巾とエプロンでした。
そして、ある日、家庭科の授業があった日、珍しく忘れ物をしてしまったのです。
紗弥さんの自宅は学校まで歩いて30分はかかります。いつものように学校から帰宅し、ランドセルからエプロンと三角頭巾が入った袋を取り出すと洗濯機に持っていきました。
あれ?三角巾が無い!もー、アタシ、バカー!
とボヤキ、再び学校へと向かいました。
学校へ戻ると、まだ部活動をしている生徒や校庭を掃除する先生等がいました。
しかし、忘れ物をした事が恥ずかしく、誰にも言わずに家庭科室に向かったのです。
その時の時間は夕方の5時でした。
そして、自分が座っていた席や周りを捜しました。
あれー?なーい!教室かなー?
教室に向かいました。
その時です!担任の先生に廊下で会いました。
どうした?とっくに下校時間だぞ?
あ、橋先生!こんばんは。それが、三角巾の忘れ物をしちゃって、知りませんか?
んー!見てないぞー!
とりあえず、明日には見つかるかもしれんし、先生が捜しておくから今日は帰りなさい。お父さんが心配するぞ?
はーい
紗弥さんは渋々、返事をして帰りました。
しかし、やはり大好きな、お母さんの形見です。帰宅後も頭から離れません。
布団の中でモジモジしながら、寝なきゃとゆう気持ちと葛藤します。
そして、人生で始めて、夜道に出ました。
パジャマから私服に着替え、玄関にあった懐中電灯を持ち、学校に向かいました。
この時の時間は夜9時30分です。
その後、学校に到着したのは10時でした。
いつもと違い学校は真っ暗です!
寒い~
手に息をかけ温めながら進みます。
そして、もう一度、1階の家庭科室を見に行くと、扉の磨りガラスから赤い光が見えました。
やだな~。誰かいるのかな~?
小さな声でつぶやきました。
そっと扉に手をかけて力を入れると、少し開きました。
やった!開いてる!
膝をついて姿勢を低くすると、ハイハイで前に進みます。
そして、赤い光りの方を見ると、女の子がいました。
女の子に視線を移すと、アツイ!アツイ!と段々と聞こえてきます。
紗弥さんは少し怖くなりながらも、とりあえず自分が座っていた席の下に懐中電灯を向けました。
すると、三角巾があったのです!
調理台の下の三角巾を拾い、両手で握りしめると、アツイよー!とゆう声が紗弥さんのすぐ後ろから聞こえてきました。
キャッ!
思わず、声にならない声が出ました。
紗弥さんの真後ろには皮膚が焼けただれ、目玉が無い炎を全身にまとった女の子が紗弥さんの体を摑もうとしていたのです。
アツイよー!
女の子は、ずっと、そればかりです。
もう、ダメだ!
そう思った時です!
紗弥さんの横にあったシンクの蛇口が勝手に動き、水が吹き出しました。
そして、水が女の子にかかります。
その時です!
紗弥、逃げなさい!
紗弥さんの目の前に女性が現れました。
紗弥さんは握っていた三角巾を見て分かりました!
お母さん!
女性は紗弥さんを見て頷くと再び、
逃げなさい!
と話しました。
紗弥さんは、お母さんと話したい気持ちを抑えて、家庭科室を出ました。
振り返りながら、家庭科室から漏れる光りを見ていると、赤い光りは段々と消えていったのでした。
その後は無事に帰宅し、紗弥さんは一生、母の三角巾を大事にしました。
そんな話しを知ってか、学校では、夜12時になると家庭科室には焼子さんが現れて、掴まると丸焼きにされるんだ!
と噂されるようになりました。
オシマイ
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