第3話 焼子さん(前編)
昭和の中頃、各地で放火等を含めた火事が多発していた。
その犠牲者になった一人、山根翔子さんの話しを先ずは致しましょう。
翔子さんは当時、料理が大好きな小学5年生でした。
お料理の時は、母が作ってくれた大切な三角頭巾とエプロンを必ずつけます。
家族はとゆうと上場企業に勤めていた父が1人、専業主婦の母が1人、そして、生まれたばかりの弟が1人いました。家はローンが少し残る木造の一軒家に住んでいました。
当初は仲も普通な夫婦でしたが、弟が母のお腹にいる時分、父の浮気が発覚しました。それからは夫婦喧嘩の絶えない家庭になっていきました。
その頃からです。翔子さんの性格も段々と暗くなり、学校でも孤立してき、大好きな家庭科の授業にも出なくなり、保健室で過ごす事が多くなっていったのは
しかし、母は子供達の為にと別れる事が決断出来ず、仕方なく父に従い日々を過ごしていました。
そんな時です、父は酒に酔った勢いでポリタンクの中の灯油を家中と庭に撒き散らし、火を付けたのです。
時間は夜の2時でした。翔子さんと弟は寝ています。母は父を止めようと必死にしがみついていたのですが、殴られ気を失っていました。
炎は段々と家中に広がっていきます。
そして、火に一番に気付いたのは隣に住む人でした。
すぐに消防が呼ばれましたが、駆けつけるまでに5分はかかりました。
その間、炎の中で目を覚ました母は赤ん坊の弟をすぐに抱き上げ、翔子さんの寝室へ走りました。
翔子さんも叩き起こされ、悲鳴をあげました。
キャーキャー!お母さーん!お母さーん!熱いよ!熱いよ!
必死に叫びます。
そして、3人は2階のベランダへ走り、窓を開けました。
火に気付いていた隣の人やご近所さんが次々に集まり、バケツに入った水を家にかけていきます。
その中で誰かが叫びます!
優子さんよ!優子さん、早く!飛び降りて!
その時です!遂に屋根が崩れはじめ、母の優子さんは赤ん坊を抱いたまま、落ちてきた柱に足を挟まれてしまいました。
翔子さんは、もうパニックで大泣き状態です。
怖いよー!怖いよー!とゆう声が辺りに大声で響きます。
早く!早く!飛び降りなさい!大丈夫だから!
と下にいたご近所さん達も一斉に叫びます。
と、そこへ消防が到着し、放水作業の準備を進めると同時に翔子さんを受け止めるマットを用意していきました。
が、しかし、火の中に埋もれていく母と弟を見ながら泣いていて煙を吸い続けた翔子さんは、その場に倒れてしまいました。
その後、消火作業に3時間がかかり、ようやく鎮火すると、救急隊が黒こげになった3人をタンカーで運びました。
見ていた人は全員、悲しみに暮れました。
その後、火を付けて逃げた父は警察の捜査で不倫相手の家にいる事が分かり、すぐに逮捕に踏み切りました。
そんな事件があってから、10年後、翔子さんが通っていた小学校の家庭科室にオバケが出ると噂がされるようになったのです。
後編に続く・・・
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