2.元天才子役

十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人とは、なるほどよく言ったものだ。まさに、俺がその典型だった。俺は、3歳で大手玩具メーカーのCMに起用されると、たちまち人気になった。小学校に上がると、俺の周りにはいつも人だかりができていた。女子からはよくモテたし、男子も俺がいると女子が寄ってくるからと行事の度に、俺をグループに加えたがった。

 

 しかし、順風満帆かと思われた俺の人生は小学校高学年になってから、陰りを見せ始めた。声変わりが始まり、大人に近づいていき子役としての旬が過ぎていたのだ。段々と子供らしさがなくなっていく俺に、世間は興味を失い始めていたのだ。中学に上がる頃には、仕事はほぼなくなり、それに比例して俺の周りから人がいなくなっていった。


 そこで、当時所属していた子役専門の事務所を退所して、所属事務所の社長に紹介してもらった今の事務所、つまり北野声優事務所に所属することを決めた。演じることは、元々好きだったから演技の仕事をまたできることが嬉しかった。俺のデビュー作は大物監督の映画に登場するそこそこ出番がある少年の役だった。デビュー作の注目度が元々高かったことと、元子役の声優という物珍しさもあり、長屋千尋という声優はメディアでも、かなり取り上げてもらえた。


 だけど、この世界はバンバン新人声優が仕事をもらえるほど甘い世界ではない。その後、俺はたくさんのオーディションを受けたがもらえるのは、名前のないモブばかり。ギャラの高くなる四年目に突入した今現在はなかなかもらえていない。このまま、朽ちていきそうなそんな予感を抱えたまま俺は気づけば21歳になっていた。


――――――――――

 彼は高校に上がってから、正式に声優になったので4年目の声優です。ところで皆さんは、何時投稿が一番見やすいですか?

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