第33話
「お前!!昨日悪魔と一緒だった奴じゃねーか!!」
「お?」
次の日俺はギルドに向かった。
もしかしたらダンジョンの依頼とかあると思ったのだ。
するとなんか変な男に絡まれる。
別におじさんって風には見えないから、あの頭はスキンヘッドか。
いや、若くしてももう……
「大丈夫だ。人生は明るいよ……ハゲだけに?」
「あ?喧嘩売ってんのか?」
「喧嘩って売れるんだな。助かった、実は俺かなり金欠なんだ」
家のローンに凛の調理器具はみんなで使うから折半し、王都に来る前に冬夜に借金を返した。
お陰で俺はマジで金がない。
「頼む!!買ってくれ!!」
「いいぜ。ボコボコにしてやるよ」
「マジ!!じゃあ金貨一枚でいいか?」
「俺に勝ったらいくらでもくれてやるよ!!」
「うおっ!!」
俺はパンチを躱す。
はっや。
「おいお前、なんて相手に喧嘩売ってんだ!!」
「誰だ!!モブみたいな導入しやがって!!」
「そいつはB級冒険者の
「きらら!!」
この強面スキンヘッドの名前きららなの!!
「そんな奴に喧嘩を売るなんて命知らずなのか!!」
「クソ、まさかきららに喧嘩売っちまうなんて」
「オラオラ!!このまま体力無くなるまで逃げ回る気か!!」
確かに速いし力強い攻撃だが、正直思っていたよりも普通だな。
あの時見た騎士の攻撃はもっと凄かった。
「まぁ勝てるわけじゃないけど」
それでも
「反撃くらいは出来る!!」
俺は右手のパンチを躱し、カウンターに一発顎にクリーンヒットさせる。
「……イッテェな」
「すげぇタフだな」
まるであの時のオークと同じだな。
「オラオラオラ!!」
「よっほっや」
避け、当てる。
避け、当てる。
魔法を使う人間と違い、こちとら接近戦しかしてこなかった男だ。
近距離ファイトは負けないぜ。
「グ!!この!!」
「焦りすぎだぜ」
俺は渾身の一撃を躱し、デカイのを一発与える。
きららは大きく体をのけぞらせる。
「チャンス」
俺はその空いた腹にラッシュを加える。
だが
「硬っ!!」
「やるじゃねーかお前。正直舐めてたぜ」
まるで鉄を殴ったかのような感覚。
「あ、あれは硬化魔法!!希星の得意の魔法だ!!」
「説明ありがとうモブ顔」
まずいな。
今までの俺のスタイルは武器ありでの破壊力を前提とした動きだ。
鍛えた拳だって、魔法の前では無力。
「じゃあ終わらせるか」
俺はわざとノーガードで迫ってくるきららに蹴りを入れるが、食らった形跡はない。
いわゆる詰みだ。
そのまま俺の足は掴まれ
「起きた時には泣いて詫びろよ」
そしてその一撃が顔面に
「清」
いつの間にか隣にいた少女。
「忘れ物」
芽依は爆炎剣を手渡す。
依頼を受けた後に取りに行こうとしていたんだが
「ありがとう」
「ううん。じゃあ頑張ってね」
「なんだお前。勝負に割り込むなんれぇ〜」
きららはばたりと倒れる。
「誰?」
「きらら」
「……そう」
芽依は興味無さそうに依頼を一枚取り、ギルドを出て行った。
「嘘だろ、あの希星が何も出来ず負けるなんて……」
「お、おい!!あの容姿、まさかあれってスペルシティーの化け物じゃ!!」
「な、なんでそんなのが王都にいんだよ!!」
ギルドは芽依の登場で阿鼻叫喚。
昨日は凛の方に注目がいってたんだろうな。
いや気付けよって話ではあるけど。
「じゃあ今度金貨くれよな。じゃあな」
俺はきららを置いて依頼を見に行く。
D級でダンジョンの依頼なんてあるのかと思ったが
「本当にあるんだな、ダンジョン」
俺は一枚の紙を手に取った。
◇◆◇◆
「へぇ……ここが」
俺は依頼にあった地図に従いダンジョンへと辿り着く。
場所は王都から少し離れた山岳。
周りは岩に囲まれた中、一箇所だけ異常に大きな穴が開いている。
「名前は
濁音多いな。
「依頼はダンジョンの奥にある鉱石の採取。まぁD級だしそんなもんか」
ここで説明しよう。
ダンジョンとは、モンスターや未知のアイテムが発生する非常に稀有な場所のことを指す。
今まで見てきたゴブリンやオークもダンジョン産である。
基本的に見つけてはぶっ壊されるが、その度に新しいのが湧いてくる。
長年の研究により、壊した分だけ増え、何もしないでいるとダンジョンは増えなかった。
このことから、ダンジョンは壊さずに中にいるモンスターを倒して宝や貴重な鉱石だけを回収する様にしましょうとなっている。
と、昨日芽依に教えてもらった。
「そりゃモンスターの数が減らないわけだ」
世界の半分がモンスターに支配されるのも納得。
それこそ
「呪いの力でもない限り……な」
さて、早速行きますか!!
「ちょっとそこの君!!」
「はい?」
なんか見覚えのある声の掛け方だな。
「一人でダンジョンに向かう気?」
「それは流石に危な過ぎるだろ」
「オ、オイラもそう思う!!」
「久しぶりです」
オールスター参戦かのように並び立つ四人組。
なんだこの濃いメンツ。
左から順に気の強そうな女の子、なんか陽キャそうな男、逆に気の弱そうな太り気味の男に
「あ、この前の」
学園に行くよう言ってくれためちゃ可愛い子。
ピンク髪で目がクリンクリンしてる。
「えへへ」
「?」
「何?雫知り合いなの?」
「はい!!この前学園に用事があったみたいだったので、その時に僕が少し道案内してやったです」
「そうなんだ。じゃあもしかして転校生とか?」
「そ、そんはずないと思うんだ。た、確か、学園は途中入学が認められてないはずだな」
「ん〜、まぁ難しいことはいいとしてさ、お前一人でダンジョンに行くつもりか?」
陽(仮)が話かけてくる。
「そのつもりだが、何か問題でもあるのか?」
「大有りも大有りだ。そのプレートから見るに、お前D級だろ?」
「ダンジョンは君が思ってるよりも簡単な場所じゃないんだな!!」
「僕もそう思うです」
一斉に非難される。
なんだか寄ってたかってそう言われると
「確かにまずかったな」
「意外と物分かりいいわね」
「一悶着あると思ってた」
「オ、オイラも……」
なんか口々に変なこと言われてる気がする。
「じゃあ芽依……もしくは凛と一緒に来てみるか?」
「……聞こえない?」
「どうした急に?」
「え?あ、独り言なのです!!」
「そうか?」
例のピンク髪の美少女が慌てる。
「文お兄さん、僕達と来るですか?」
「え?君達と?」
「元々みんなそのつもりで声掛けたですよね?」
すると急にモジモジし出す連中。
「わ、私はそういうつもりじゃなかったけど、仕方ないから一緒に行ってあげなくもないわ!!」
「お、俺も安全面を考えるなら人が多い方がいいと思ってたし!!」
「オ、オイラはみんながそんな顔してるなと思っただけだな!!」
……なんだこいつら。
「みんなあんまり素直じゃないだけです。だけど、みんな良い子だから気にしないで欲しいです」
「お、おう」
耳元で囁かれるとむず痒いな。
「どうですか?多分、楽しいと思うですよ?」
俺は差し出された手をジッと見つめる。
確かにダンジョンという危険な場所で単独は危険だ。
しかも運良く、実力が拮抗してそうなメンバー。
なんか……
「少年漫画みたいな展開だな」
俺はニヤつく顔を抑え
「俺なんかでよければ、一緒にいいか?」
「大歓迎です」
そして俺はその手を取った。
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