第11話
「愛菜?」
「ふんだ」
連れて来られた場所は、とある飲食店だった。
そこには何故か怒った様子の愛菜の姿。
「座りなさい」
「とりあえず事情をーー」
「座れ」
「はい」
俺は素直に座る。
エルフさんちょっと怖いかも。
「何か食べる?」
あ、食べさせてもらえるんだ。
「じゃあこのネストシュガーってやつで」
「愛菜は?」
「私も同じの」
「分かったわ」
そしてエルフさんがネストシュガーを三つ頼む。
マジでなんで俺連れて来られたんだ?
「最近愛菜から話は聞いてるわ。頭のおかしい人がいると」
「愛菜さん?」
「だって本当だもん」
何がだもんだ。
俺も言ってやろうか?
キモくて吐くぞ。
「私的には輪を乱さない、居てくれるだけでそれ以上は介入しない存在が欲しかったのだけど、愛菜が積極的だから気になったのよね」
「もしかしてたが、君が愛菜の言ってたパーティーメンバー?」
「ええそうよ。名前はネイン。まぁ好きに呼んでちょうだい」
まさか愛菜のメンバーがエルフだったなんてな。
言ってくれたらよかったのに。
いやそれよりも、俺は会う時に言いたいことがあったんだ。
「なぁネイン。どうして愛菜にあんな危ないことをさせたんだ?」
「危ないこと?」
「セクハラ親父に弱みを握られるなんて、何されるか分かったもんじゃない。愛菜を酷い目に遭わせるつもりだったのか?」
俺の発言にネインは目を丸くする。
そしてクスリと笑い
「安心して。あの男は私達には何も出来ないわ。私のパーティーメンバーに手を出せば自分の命が危ないと分かるはずだから」
「なにそれ怖ぁ」
思ったよりも過激派だったエルフさん。
見た目とのギャップで風邪ひきそうだ。
「なんか悪い。勝手に悪者みたいに決めつけて……」
「別に構わないわ。私もあなたを呼びつけた理由は似たようなものだから」
「えっと……それってつまり」
「愛菜に悪い虫がついてないか心配してたのよ」
「今日同じこと何回起きんだよ」
もしかして俺って本当に悪い虫だったりするのか?
「でもこうして話せば分かるわ。あなたが純粋に愛菜を大切にしていると」
「当たり前だ。愛菜は大切な友達だからな」
すると愛菜が妙にニヤニヤし始めるが、怒ったり笑ったり忙しい子である。
「でもやっぱり愛菜には悪いけど、彼をパーティーには入れられないわ」
「ど、どうして!!文清はいい人だよ!!」
初めて愛菜が喋った。
「いやだから俺は入る気ないんだって」
「彼から魔力を感じられない。生まれつきの障害か、もしくは呪いによるものかは分からないけど、彼は今後どう足掻いても強くはなれない」
「そんな……」
愛菜の顔が絶望に染まる。
俺は黙って砂糖の塊を食べる。
「ごめんなさい。知っていたにしろ知らなかったにしろ、嫌なことを言ってしまった事実はあるわ」
「別に気にしてない……わけじゃないが、一応受け入れているつもりだ。例え魔力があろうと無かろうと、俺は自分の楽しいと思う道に進むだけだ」
「パーティーは組めないけれど、是非とも友人にはなってみたいものね」
ネインが暴力的なまでの笑顔を見せる。
愛菜だけでも過剰な程の戦力に、ネインのような国宝級美人までいるパーティーか……
やっぱり入らなくてよかった〜
「こうなってくると抜けた一人もヤバそうだな」
「成長し続ける私達と、停滞する彼。辛いのは彼自身なのよ?愛菜も諦めて、新しいメンバーを探しましょう?」
「そうだそうだ(便乗)」
俺とネインの結託に、愛菜は
「嫌だ」
そっぽ向いた。
「絶対嫌だ。文清は私達のパーティーに入るんだもん」
「全く、この子は直ぐに我儘になるんだから」
「でも可愛いな。写真に収めたら飛ぶように売れそう」
「あなた結構イカれてるわね」
急に暴言を吐かれた。
イカれてるって普通に悪口だからね?
「いーやーだー。文清はパーティーに入るのー」
「なんでここまで気に入られたんだろうか」
「さぁ。でも、私にはなんとなく分かるわ」
「そうなのか?」
「ええ。この子は優しい子だから。昔から可愛がられて育ってきたの。その反動のせいか、可愛いからという理由で贔屓されることがこの子にとっては苦痛だった」
何不自由ない生活が窮屈か。
俺としては羨ましい限りだけどな。
「失敗すれば褒められる。頼んでみると了承される。問題を起こしても誰かが解決する。それは確かに楽なのだろうけど、それだと本当の成長は出来ないだろうと私は思った」
「もしかして二人が冒険者をやってる理由って」
「まぁ私の場合は半分はお金なのだけど、もう半分はこの子の為ね。誘われた時は少し迷ったけれどね」
二人は別に冒険者でなくても生きていけるのだろう。
それでもこの道を選んだ。
それが、どうしようもなく俺にはカッコよく見えた。
「まぁ冒険者になったところでこの子の頼みを断る人なんていなかったのだけど、初めてその頼みを断った人間がいたらしいわ」
「変な奴もいるもんだな」
「あなたよ」
俺だったか〜(棒読み)。
「いや普通じゃね?」
「普通じゃないわよ。私達のパーティーを断る人間は、少なくともこの街には一人もいないわ」
「いやそんなはず……」
二人の顔を見る。
「ない……もん」
「愛菜みたいになってるわよ」
「普通断らないな、これは」
「そうね。だって私達可愛いから」
自分で言うかと思ったが、この領域までくると当たり前なことなのかもしれない。
多分嫉妬すら湧かないレベルで別格だしな。
「だから愛菜に目をつけられたのよ」
「なにその言い方。まるで私が危ない人みたいな言い方やめてよネイン」
「危ない人でしょ愛菜は。私を勧誘するのに三日間も付きまとった時は少し引いたわよ」
「お泊まり会楽しかったね〜」
ワイワイと盛り上がる二人を見て、本当に仲良しなのだと俺は少しほっこりした気分になる。
だからこそやはり
「俺は邪魔だな」
「そーー」
「んなわけないよ!!」
愛菜が俺の腕をホールドする。
ちょ!!だから力強いんだってあんたら!!
「魔力が無いと分かれば、こうやって力で抑えることも出来るってことだよね」
「き、貴様ぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「あら、これ美味しいわね」
もう少し逃げようとしたら胸とか押しつけてくれないかなと抵抗するが、マジでピクリとも動かない。
愛菜からすれば俺の動きなんぞ、子犬が暴れてる程度に過ぎないのだろう。
「別に戦わなくていいんだよ?遠出する時に一緒に来て、夜にトランプで遊んで、それで恋話とかしてくれたらそれだけでいいの」
「それパーティー組む必要あります?」
「一緒にダンジョンとか潜ろうよ〜。私達が守るからさ〜」
「だからそういうのが嫌なんだってば〜」
「また移ってるわよ」
俺と愛菜で嫌々合戦を繰り広げる。
周りから変な目で見られているが、俺達は止まらない。
ネインもそれが日常かのように食事を楽しんでいる。
そしてなんやかんやあって
「文清が一年以内にCランクに上がれば私達のパーティーに」
「上がれなければ入らない」
「愛菜はそれでいいの?彼が手を抜けばこの約束はーー」
「大丈夫だよ。だって、文清がそんな手を抜くような人間じゃないことは、私がよく知ってる」
実際パーティーは組まないにしろ、やはり愛菜とは今後も良い関係を築いていきたいと思った。
「待ってるね、文清」
「次会う時を楽しみにしてるわ」
そうして俺達は別れた。
「あ、そういえば」
愛菜は最初何故怒っていたのだろう。
ネインに俺の加入を反対されたからだろうか?
「まぁ細かいことは気にしなくていいか」
「おい待てよ」
そして本日三度目の
「面貸せや」
恒例行事にあった。
「フラれた?」
「……フラれた」
「理由は?」
「顔が怖いからだと」
「……」
「……」
「なんか……悪い」
その後一発殴られた。
◇◆◇◆
「あ!!」
「どうしたの?」
愛菜は何かを思い出し、立ち止まる
「文句言うの忘れてた!!」
「文句?そういえば最初妙に怒ってたわね」
「そうなの!!例のあの人がまた来んだけどね」
愛菜はプンスカと怒る。
「どうせまた告白でしょ?」
「そうなんだけど、あの人いつも乱暴してるから私苦手なの。なのに文清が後押ししたからって理由でまた来て、正直凄く迷惑」
「愛菜に迷惑と言われる人間は珍しいわよ。あのチンピラ三人衆は誇るべきね」
「ネインふざけてる?私は本当に怒ってるんだよ?」
「はいはい」
「ねぇ話聞いてる?そもそも文清はさーー」
ネインは違う方面で、文清をパーティーに入れるべきなのではと考え始めるのだった。
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