外伝・メリディエスの人々

仲良し三令嬢と精霊の森

アリスティアがメリディエス王国から

イスト王国へと向かう途中の馬車の中で

まだ三人の令嬢が幼かった頃

アリスティアはプリメラとメルルと

三人で一緒に探検する事となった森を見つめ

その時の記憶を思い出していた。


「アリス!メルル!足元に気をつけるのよ!」


先頭を歩くプリメラは後からついてくるアリスティアとメルルを心配しながらも

二人が歩ける道を探る


「メルル、そこ危ないから気をつけてね」


「ありがとうアリス」


プリメラが先陣を切り、彼女の指示のもと

二人は確実に前に進み、三人は森の奥を目指す。


「見つけた!!」


プリメラの視線の先には大きな一本の大樹が生えていた。

ここは精霊の森の聖なる領域の奥深く

噂では精霊が座す神聖な領域。


時は遡りある時、三人がふとこの場所まで

入り込んでしまった時に弱った一体の

精霊を見つけたのが事の発端だ


「…精霊さんの元気ない…どうしよう」


「どうにかしなきゃ精霊さんが死んじゃうわ!!」


「果物とかあげれば良いのかな…?アカデミーや教会で調べられないかな?」


三人は知恵を絞って相談しあった

結果、精霊は魔力を栄養とし

それを蓄えて成長するらしい

聖なる森のは元々魔力濃度が高いと言うが

この領域の魔力の濃度では

足りないのだろうか?


三人は準備の為にそれぞれの家へと戻る。

話し合いの結果、ありったけの魔力が空の

魔導鉱石をカバンに詰め込んで持ってきた

彼女達は魔力の引き出し方が

まだ良く分かっていないため

その魔導鉱石に三人で魔力を込めると言う

アカデミーで習った事をそのまま行う算段だ


精霊の目の前にありったけの魔導鉱石を並べて準備に取り掛かる幼き令嬢三人

果たしてそれがうまくいくかはわからないが


「プリメラ、メルル、準備はいい?」


「いつでも良くってよ!」


「こっちも大丈夫」


三人は膝をついて一斉に祈る様に

魔導鉱石に魔力を込める


(精霊さんが元気になりますように…)


山の様に積まれた魔導鉱石がほのかに輝き始めた。


(精霊さんに癒しを…)


三人は想いを込めて祈りを捧げる。

それに応えるかの様に魔導鉱石の光が

強くなり、そして、七色に輝き出した

それぞれ特性の違う三人の魔力が

混ざり合って溶け合う


精霊は輝きに気付き、魔導鉱石に近づく。

輝く光に触れる精霊は何処か喜んでいる

様子だった。


「精霊さん、大丈夫?」

「元気になりましたか?」

「上手く栄養補給できた?」


アリスティア達三人は精霊に話しかけると

精霊は三人に穏やかな表情で微笑んだ


『─ありがとう、人間の、優しい子供達』


魔導鉱石に蓄えられた魔力を身体に補給して三人の目の前を元気よく飛び回る

力を取り戻した精霊は身体を輝かせる


『─貴女達の様な人間に巡り逢えて私はとても幸運でした、もし貴女達が居なければ、数100年はこの森で眠っていたでしょう。』


「よかったね、妖精さん」


「お役に立ててよかったです」


「アカデミーの初等科で学んだ事はこう言うのにも役立つのね。」


三人はハイタッチをして互いの健闘を讃え合った。


『…助けて頂いたお礼に、貴女達に私たち聖霊の加護を与えましょう』


(うん?セイレイのカゴ?入れ物がもらえるの?)


(違うわよアリス、セイレイの加護…ようはお守りみたいなものよ)


(ふふ、相変わらずですね、アリス)


小声でボケるアリスに同じく小声で突っ込みを入れるプリメラ、二人のやり取りに微笑むメルル。


『貴女達のこの先の人生でもし困った事が有れば、私達、聖霊が必ず力になります。そして、貴女達の友情が末長く続く事を心より願っておりますよ、いつの日かまた会いましょう…優しき子供達よ。』


聖霊から産まれた三つの光玉が

それぞれアリスティア、プリメラ、メルルを包みこむと、彼女達に浸透する様に程なくして光は消滅する。

彼女達は自分の身体を見渡すも特に変化はない様に感じていた。


そして、事を終えた輝く聖霊は力強く

空へと飛び立ちその光の軌跡には

魔力の残滓が光の粒となって降り注ぐ

実に幻想的な光景だった。


『─ありがとう』


空を舞う精霊は確かにそう言って何処かへと飛び立っていった。


「さて、目的も済んだ事だし」


「ええ、帰りましょう」


「その前に、魔導鉱石をカバンに入れましょうか」


三人は手分けして片付けた後来た道を戻る

そして、三人のがメリディエス王国に戻ると

それぞれの令嬢達が両親に

こっ酷く叱られた事は言うまでもない


昔、令嬢の三人で行ったささやかな冒険だった。


イスト王家の魔導馬車から精霊の森を眺めていてアリスティアは懐かしい記憶を思い出していた。


(…三人でまた仲良く出来たら良いな…)


アリスティアは窓の景色を眺めながら

そう思った。

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