第4話

 世界は思っているよりもずっと単純で、

 僕たちの想像なんかあてにならない。


 複雑に絡み合って成り立っているそれら全ては

 見えている表面にしか意味がなく、

 内側に秘めている内情なんて、誰も知る由もない。


 つまり、隠し事は、バレなければ隠していないのだ。


 朝起きる。

 日曜日の朝。


 明日が仕事であるから、憂鬱な朝。


 あくびを噛み殺して、ゆっくりとベッドから這い上がった僕は、

 テーブルの上に置かれたテレビのリモコンを手に取って電源をつける。


 真っ黒い画面。


 アンテナが放送を受信していない旨のメッセージが表示されたので

 ザッピングをしながら、他のチャンネルが受信できているかを確認する。


「・・・はぁ?」


 この部屋は集合住宅なので、テレビの受信機も基本的に大家が管理している。

 僕以外の住人は少なくないので、僕より早く気がついた誰かがもうクレームを入れているかもしれない。


 テレビじゃなくとも、現代はスマートフォンがある。

 僕はテレビを諦めると、電源を消してから枕元に充電しているスマートフォンを手に取ってからスリープモードを解除した。


「・・・??」


 真っ黒い画面。


 画面を数回タップしても、電源ボタンを長押ししても、

 強制再起動で、いくつかのボタンを同時押ししても、

 反応がない。


 覗き込むように僕はうんともすんともしないスマートフォンの画面を眺めていると


【Face recognition registration completed. ………Welcome, first king. Please make a better world.】


 一瞬、画面が光り、目を細めて


 現れた文字は、アルファベット。

 あまり外国語が得意ではない僕はゆっくりと単語を読んで


「レジストレーション、コンプリー、ああ。認証完了?

 ようこそ、最初の王様??

 ぷりーず、メイクベターワールド………そこそこな世界を、作る??」


 首を傾げながら、翻訳を使おうとスマートフォンを探して、


「ああ、手に持ってたわ」


 ボケのようなやりとりを挟んでから、

 スマートフォンは、起動した。


 しかし、ホーム画面には1つのアイコン以外全て消えていた。


 今までやってきたアプリゲームも、写真も、一生懸命描いたイラストも、

 全てなくなっていた。


 いや、このスマートフォンはガワだけ僕ので、中身は、本物は別の場所にあるのかもしれない。

 そんなドッキリを、仕掛ける人間はいない。


 僕には友達はいないのだった。


「ええ。。。」


 ため息。


 そして、昨日この出来事が不意に思い出される。


「世界を救ってくれ、だったか?

 ここには、世界を作れって………」


 アプリアイコンの名称は【make world】。

 

 僕はとりあえず嫌な予感がしたので、外着に着替えてから顔を洗おうと洗面台の蛇口をひねる。


「よかった。水は出るみたいだな」


 一通り外に出る準備が終わってから、深呼吸。


 おおよそここから先の展開は2つに1つ。


 異世界なのだ。

 

 扉を開けるとそこは、知らない世界なのだ。


 



ーーーなんて思いました。


 扉の先は、確かにいつもの玄関先ではなかったが、

 異世界でもなかった。


 コンクリートで囲まれた窓のない空間。

 不自然のコンクリートの壁にいくつかの扉が並んでおり、

 そのうちの1つから僕はコンクリートの空間に入場した。


 

「なんや、また男かいな」


 耳に刺さるような声高な男。


 僕の視線の先には、二人の男がいた。


 片手を上げて、あいさつのようだ。


「こんにちは。何か、知ってたりする?」


 もう一人の男は丁寧ね口調で僕に問いかけるが、

 首を横に振りながら、


「知らないけど、昨日女の人から世界を救えって何かもらった覚えはある」


「せやなぁ。オレもそうやねん」


 

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