第11話 いい子のオレと鬼太郎のアンテナ②

「ちょっと! 何やってんの! やめてやめて!」

 ナミちゃんが来て、言った。

 でも、オレたちはなかなかケンカをやめられなかった。

 だって、ムカつくんだもん。

「どうしてケンカしたの?」

 そんなの知らないよ、かっくんがムカつくんだよ。

「すーくんが先に蹴ってきたんだよ! 俺、何もしてないのに!」

「うるさい!」

「本当だよ、すーくんが悪いんだよ! 先に手を出したのはあいつだよ!」

「うるさいうるさいうるさい‼ かっくんが悪いんだ!」

 オレは顔を真っ赤にして怒鳴った。

 オレだってオレだって、学校に行きたくない日もあるんだ。今日だって、話し合いなんてしたくなかった。話し合ったって、結局オレの思うようににはならないんだから。

「もういいから、二人とも離れて。かっくんはとりあえず和室に行って。勉強してよ。塾の宿題、終わってないんでしょ?」

「だけどさぁ」

「とりあえず、和室に行ってよ」

 ナミちゃんはかっくんを和室に向かわせると、オレを抱き寄せてぎゅっとして、頭をなでた。その様子を見たかっくんは

「ふん! すーくんばっかり‼」

と言うと、すごい音をたてて和室の戸を閉めた。

 オレは、ちょっとだけかっくんがかわいそうかなと思ったけど、ナミちゃんに顔をうずめて泣いた。ナミちゃんがかっくんに何か言って、それから、「すーくん、ちょっといい?」と、和室に行こうとしたので、オレはナミちゃんのパンダの手をぎゅっとつかんで行かせなかった。

 ナミちゃん、行かないで。

 ナミちゃん。

 ナミちゃんは、毛がふさふさのパンダだ。

 でも、ちゃんとナミちゃんのにおいがする。

 ナミちゃんのにおいをかいで、ふさふさのナミちゃんをさわっていたら、なんかちょっと安心してきた。

 ナミちゃん。

 ナミちゃん。

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