第10話 いい子のオレと鬼太郎のアンテナ①

 うちに帰ったら、なぜかかっくんがもういた。かっくんの下校時間はまだなのに。

「かっくん、どうしてうちにいるの?」

「つまんないから帰って来ちゃったんだよ」

 なんでもないことみたいに、かっくんは言う。

 かっくんはこれまでも、勝手に学校から帰って来ちゃうことがたびたびあった。

 ……なんか、お腹がぐるぐるする。

 ぐるぐるぐるぐる。

 なんか、お腹、痛い。

 ぐるぐるぐるぐる。

「なんで帰ってくんだよ、下校時間前に! ばかだろ!」

「はあ⁉」

「学校もちょくちょく休むし。学校は毎日行くんだよ! ばー--------か‼」

「っるせーな! お前にはわかんねーよ‼」

「お前にだって、オレの気持ちはわかんねーよ‼」

 オレはこんなにがんばってるのに。

 オレはこんなにがまんしているのに。

 いい子でいなくちゃって。

 オレはぼろぼろ泣きながら、かっくんの足を蹴った。

「何すんだよ!」

 かっくんも蹴り返してきた。

 もうむちゃくちゃだ。

「すーくんばっかりかわいがられて、ズルい!」

 かっくんが言う。

 ばかじゃないの⁉

 そんなの、オレのセリフだよ。

 うちはかっくん中心に回っている。

 塾に行っているかっくんのスケジュールに合わせて生活しているから、友だちをうちに呼びたくても呼べないときがある。かっくんが勉強しているときは静かにしていなくちゃいけない。

 何が、すーくんばっかり、なんだよ!

 オレは蹴りに力を込めた。

 いて! とか、かっくんが言う。

 ふんだ!

 かっくんが学校行かなかったり、学校から勝手に帰って来ちゃうから、ナミちゃん泣いてんだぞ。

 かっくんこそ、ズルい。かっくんが先にわがまま言うから、オレ、言えなくなっちゃったんだ。

 オレはぼろぼろ泣いた。

 泣きながら、かっくんを蹴ったり叩いたりした。

 バカバカバカバカ‼ かっくんのバカ!

 かっくんも、もちろん、蹴ったり叩いたりしてきた。

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