第5話 サイアクな日①

 次の日はさらにサイアクだった。


 オレはクラスの何人かで野球ごっこをしている。

 オレはゲームも好きだけど、野球も好きなんだ。本当は地域の野球チームに入りたいけど、ナミちゃんが「お母さんのお手伝い」が出来ないからあきらめてって言うんだ。ナミちゃんは「今でも忙しいのに、立ち当番とかしてたら、死んじゃう!」ってさ。

 ナミちゃんが忙しいのは分かってる。ナミちゃんはザイタク仕事をしている。一見、センギョーシュフみたいだし、会社で働いているお母さんに比べて自由度が高い。うちに友だちも呼べるし、授業参観は必ず来てくれる。でも、ナミちゃんは仕事は仕事だから、大変なんだよって言ってた。

「ああ、へいちんがいたらなあ。タンシンフニンじゃなくて」って言ったら、「お父さんのお手伝いはダメなんだって」ってナミちゃんが言った。「なんで?」って聞いたら、「知らないけど」ってちょっと怒ったように言い、俺が黙っていたら、ダンソンジョヒがどうの、ジョセイベッシがどうの、ってどんどん話し始めた。ナミちゃんの怒りのポイントを刺激しちゃったみたい。

 オレはそれ以上、何も言えなくなっちゃった。


 それで、オレは学校で野球をして遊ぶことにしたんだ。

 とは言え、バットやボールがあるわけじゃないから、要するに野球ごっこ。下敷きと、紙を丸めて作ったボールを使うんだ。人数も、九人のチームが二つも作れるわけじゃないから、少ない人数対戦でも出来るようなルールを作ったんだ。

 この野球ごっこは楽しくて、どんどんメンバーが増えていった。そして、楽しくみんなで遊んでいたんだ。

 でも、ある時から少しずつ「イヤだな」と思うことが増えてきた。人数が増え過ぎたせいかもしれない。

 最初はグッとパーでチーム分けしていたのに、いつの間にかとりっこでチーム分けされるようになっていた。そうなると、強いひとばかりが集まるチームが出来てしまう。それは、野球チームに入っている足の速い子たちばかりのチームになっていた。当然、強い。

 そんなの、ズルい!

 おもしろくないよ。

 そしてオレはいつも弱い子チームだ。

 ふん、どうせオレはへただよ!

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