第6話 サイアクな日②

「わーい! 十五対三だー‼」

 ランニングホームランを打ったトシが、みんなとハイタッチしながら言った。トシはいつの間にか、この野球ごっこを仕切っている。

「ふん!」

 オレは思い切りボールを遠くへ投げ捨てて地面を蹴りつけた。

「なんだよ!」

「チーム分け、不公平だからつまんないんだよ! こんなの、ズルいよ! そっち、野球チーム入っているやつらがかたまってるじゃん!」

「っるせーな! ちゃんと、とりっこで決めただろ」

「だから、それがヒキョーなんだよ!」

「ばーか。ヒキョーじゃねえぞ。お前がヘタなのが悪いんだ」

「うるさい‼」

「へたくそ! イヤだったら、野球チーム入れよ!」

 オレはトシをにらみつけ、ゲームの途中だったけど、走ってその場を去った。

「すーくん!」

 背中でひでの声がしたけど、ムシした。ふん!

 オレだってオレだって、本当は野球チームに入りたいんだ。野球、やりたいんだよ! でも、ナミちゃんがダメだって……。それにそれに、ナミちゃんはもうパンダになっちゃったから、イッショー野球なんて、出来ないんだよ!

 教室に向かっていたら、途中でるるちゃんに会った。

「すーくん」

「るるちゃん」

「……すーくん、ズボン、破れてるよ」

「え?」

 るるちゃんはおしりのところを指していたので、そこを見ると、確かに穴が開いていて、パンツがちょっと見えていた。

 オレは恥ずかしくなって、るるちゃんに何も言わずにダッシュで走り去った。

 サイアクだ!

 オレは服のこだわりが強い。

 好きな服しか着たくない。

 今日は妖怪ウォッチのジバニャンの黒いTシャツに黒い半ズボンをはいていた。お気に入りだったから、毎日のように着ていた。この上下のときは、パンツや靴下も妖怪ウォッチにして、ちゃんとコーディネートしているんだ。

 なのに、黒いズボンが破けちゃったなんて。

 しかもしかも、それをるるちゃんに言われちゃった!

 野球ごっこだって、オレが始めたのに、いつの間にかトシがルールをどんどん変えていって、リーダーみたいになっちゃってて、もうつまんなくなっちゃった! あんなに楽しかったのに‼

 あー--------もー--------、サイアクだ!

 サイアク! サイアク‼

 

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