第24話 破壊方針固まる

合図音が鳴った。


三人それぞれのポーズで構え、ベルトコンベア上流の一点を見つめる。


で、でてきた!  対象だ‼


しかもマッドマックスっぽい飛び出しかただ。


でもって今回の“対象”は何だったかというと……、『ロックンロール』が出てきたんだよね。ちょっと意味不なのも承知。


見たままを言ったまで。


たとえばロックンロールというものをあなたなりに形にしてみてください。


~うん、それ。 その形がこれだと思う。


そういう風に表現するしかないし、表現は自由だ。


でもまさか工場でロックンロールの原体を製品として扱うとはおそれいった。


見た感じ軽そうで重そうだ。


形がないわけじゃなくて型にはまってないというタイプの形のなさ。大きいものより大きくなくて小さいものより小さくない。とにかく丸くないということだけはたしかだ。


そしてあれは何色というんだろう。どんな背景とも決して同化しない色。光にさえ義憤してる感じの色だ。


わからない人にはきっとわからないと思う。笑いたければ笑えばいいし、だからこそボクら三人はそこでわかり合えた。


そしてそのことが、これがロックンロールであるという自信を深めたわけだ。


かなり長広舌なってしまったけど、“それ”がボクらのゾーンまで流れてくるあいだの時間の経過をもそれなりに表したつもり。


ベルトコンベアの上でロックンロールは転がるようにして、音楽の破片をまき散らしながら近づいてくる。それはまるで校庭で故障したスプリンクラーのような動体に見える。


このロックンロールはすこし病んでいるんだろうか。


こんな言葉があるそうだ。


『あらゆる病は音楽的な問題であり、あらゆる治療は音楽的に解決可だ』みたいな。


すばやく三人でこれをどう壊していくか相談した。


「どう壊すって言ってもなー」


「ロックンロールって強いかな?強いよね」


「アタシにはこれがケガしているように見える。負傷」


「世界で初めてロックンロールに包帯を巻いてあげたの誰だか知ってる?」ケイイチクイズだ。


ケイイチクイズの答えはいつだって流動的だ。但し、いっさいの世相を反映しない。


「知らない」


「ぼくらだよ」


「了解」


 カンカンガクガクの議論の末に方針が決まった。


 ──『解放区より  愛を込めて』。

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