第20話 緊急停止ボタン
ダッシュしていた猿元さんは、あろうことかタブレットで工場システムの操作マニュアルを確認しだしている……。
ちょっとー。
こんなときにAIに頼めればいっぱつなのに。
どうやらこの神話的ベルトコンベアを緊急に止めたことがないんだそうだ。
どんどんゆっこちゃんは流れてきちゃっている。
スモールライトシステム自体もナノテクノロジーすぎてどこらへんがどうなのかわかんないとか言ってるしー。
もー。
ようやくそこで猿元さんが声を上げた。
「あ、あった、これだ、これ」と言って全力で教えてくれた。
でもその内容はかなり絶望的なものだった。
もともとこの工場の設計時に“生みの苦しみ”から簡単に逃れられないように社会通念上ありえないような非情な位置に非常停止ボタンがあるとのこと。
うげー。
「で、それはどこかというと、あそこ」
若干、申し訳なさそうに猿元さんが指で指し示した場所はまるで
たとえばサーカスの空中ブランコの人が最後に繰り出す大技の時に届くか届かないかという高さ。
てゆうか、停止する気なさすぎでしょ、マジで。
「でも大丈夫よ、これを使って」と祭山田さんが渡してくれたのは、カミカゼ式破壊用に使う小型のドローン。これをあの場所につっこませて止めろみたいな感じだ。
「よーし、あれれ」
ぜんぜん動かん。
「あー、だめだわ、
「くそーこのまえ駆除したばかりなのにー」
大人2人は頭を抱えるばかり。
「ボクたちがやります」
たしかしおりには自分たちだけで絶対に行動しないようにとあった。
「君達どうやってやる気だ」
「テクノロジーには頼らずに原始的に行きます」
たくさん破壊道具のために吊る下がっているワイヤーでターザンロープかまそうと思う
「やってみたまえ」
大人たちはボクらが着ているブロッコリーの着ぐるみ型非パワードスーツのスイッチを入れてくれた。なんだか茹で上がったような熱い気分になってきた。
ボクとケイイチはうなずき合い、いつも校庭で遊んでいる感じでターザンロープした。
信じられないくらい力が出た。
「アーアアー」「アーアアー」
そして最後の一本のワイヤーが大きく揺れる。
最後は2人で空中ブランコの技も取り入れた。
ぽち。
なんとか指一本ボタンにタッチできた。
ガタンと全体的な音がして、ラインが止まる。一瞬だけチカッと暗くなって、すぐにまた明るさは戻った。
おーっと工場内の人たちから声があがる。
── セーフ。
ゆっこちゃんをなんとかベルトコンベアから救い出せた。
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