第13話 地雷系作業員の祭山田さん

みんな一斉に壊している。流れてきたそれぞれの製品をそれぞれの壊し方で……。


およそ工場本来の持つ生産体系とかけ離れた行為だ。


あちこちで火花が散っている。散発的に戦闘がおこっているかのようだ。


各ヤードを通過したそのあとには棺のように横たわった残骸が下流セクターへと流るるを見るだけだ。


ケイイチがぽつりと「これが壊しはじめなのか、壊し終わりなのかがわからない」と言った。


「たしかに……」


なんだか不安になってきた。まずはこの不安を打ち砕いて欲しい。


何かが作り出されてそこに微塵も感動のわかない社会科見学的魔力にやられそうだ。


ボクらが子犬のように震えながら見学していると、猿元さんがどこかから作業員さんを1人連れてきた。ピンク色の野菜の着ぐるみを着崩した感じの女性のようだ。でもわからない。というのは、長い前髪を全部前に垂らしていて顔が見えないせいもある。


すぐに紹介があった。


「こちらが、まだ若いけどうちでの経験豊富な地雷系女子の祭山田まつりやまださんだよ」


猿元さんは笑顔で、祭山田さんの肩にぎりぎり触れない位置でぽんっとたたくふりをした。


とにかくこの祭山田さんの表情がわからない、まさかこちらは向いてるとは思うけど……。こういうのって未表情って言うんだろうか。


身長はボクらと猿元さんのちょうど中間くらい。無言のままなのでさらに猿元さんが話す。


「君たち、初日の今日は、この祭山田さんにいろいろ教わるといいよ。教えるの上手いひとだから」


でも彼女は何も言わないままだ。このときだけは事前になにも聞かされてないひとの顔になっているんじゃないかと推測された。


猿元さんがめんどくさそうにホラホラと、彼女に話すよう促す。


すると彼女から声が出た。一度伸びをしてかかとをつけた後だ。


「あのー、この子たちに社長のおことばはもう教えたんですか」


「いやまだだが……」


猿元さんが首を振ってすぐ、祭山田さんが一歩ボクらに近づいて言った。


「『壊せ!さもなくば滅びよ』それが社長からいただく毎朝のおことばです」


「は……、はい」


もっとも会社組織も壊してしまったため社長という存在はリアルにはいなくて朝礼もアバターらしい。


「だから子供って苦手なのよ」


祭山田さん声はもっとアニメ声かと思った。


この泥沼化した初対面の状況に場慣れ感のある猿元さんだけがニコニコしていて、あとは誰も笑っていない。


その背後では、また今、何かが壊された。量惨・・体制だ。


たとえば、あのニュートンさんもこの工場の起こりのように一時期錬金術にのめり込んだと言うが、ニュートンさんがもっとも没頭して研究した5年間で、そのうち1回しか笑わなかった。


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