第10話 非パワードスーツ⁇

さっそくボクたちは働くことになった。もしかしたら、広義のギグワーカーなのかもしれない。社会科見学というプラットフォームを介して……。


まだ具体的な仕事内容はわかっていないし、そもそもなにをつくっているのかも謎のままだ。


報酬は『デジタル子供ドル』で貰える。デジタル子供ドルは所有者が子供のうちはすごく価値が高くて、大人になるにつれて価値がなくなっていくという通貨。


つまり、真剣に無駄使いしまくるしかない通貨。


面接室を出て、まず向かったのは更衣室で、そこで作業服に着替えるように言われた。


まさかとは思ったけどそれは野菜の着ぐるみだった。


創業時の精神を忘れないように作業に入るときは全員着るんだそうだ。


「ピーマンじゃなくてブロッコリーでいいんだよね」と言って猿元さんは笑顔で渡してくれた。フリーサイズ。

猿元さんはおでん(?)みたいなのをもう着ている。


ケイイチが「こんなことならピーマンのほうが動きやすかった」と小さい声で後悔を口にした。


ボクは一番うごきやすい野菜の着ぐるみってなんだろうと考えてみようとしてやめた。


だって着ないのが一番だから。


2人で協力して2人分着替えた。ひとりでは着られなかった。宇宙服みたいな難易度だ。


しかもこの作業着ぐるみは、特殊で“非パワードスーツ”仕様になっていて、着ると、本来の実力の何分の一とかしか出せない。そのかわりにここぞというときに本気が出せるというちょっとまわりくどい性能のもの。


試しにピコピコ動いてみたけど、とくに変化を感じず未知数気味。


それについての猿元さんの見解は「おそらくは、小学生というのは、一秒ごとに総合力が向上していってるから、その伸びしろのぶん、利きが悪いんだろう」というものだった。


更衣室を出た。ここからはこの社会科見学の花道だ。


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