第9話 飛び級で採用された

おっと、言い忘れていたけど、面接行為には本来なら『出会い税』が課せられる。わざわざ会う必要がないと言うことで。ほかにも非効率なものはだいたい課税対象だ。AIを使ってつくった法律だからなかなか抜け穴はない。

でもボクらは小学生だし、社会科見学なのでこの場合免税措置がとられる。


面接のつづき。


猿元さんからの次の質問がきた。


「あのさ、蒸し返すみたいであれけど、お化け見たことある?」


「え??」


だって今さっきお化けはつくってないって言ったのに……。


「というのは冗談です。これで面接を終わります」


その場にいる三人ともそれぞれのさざなみみたいに笑った。冗談への対応はそれでいいと思う。


面接の最後は冗談で終わるとよいとメモした。


ボクらは採用された。しかも本採用とのこと。


社会科見学からの下克上は初めてだそうだ。


言われるままボクらは契約を交わした。猿元さんの顔つきはそのときは特に鋭かった。労働条件のところが特に小さい字で読みづらかった。


「が、がんばります」


ケイイチもボクも固くなった。生き物のおいたちはやわらかいバクテリアからだ。


ソファから立ち上がるとき、さっき拾った落とし物の隕石を猿元さんに渡した。すると表情が少し曇った。


「君たち、どうしてこの石が落とし物だと思ったの?」


「えっと……それは……」


もしこれが面接の一部だったら即時に答えたかもしれない。清濁併せ呑んでとかはやだった。


「でも、まあ、いいや」と猿元さんはそれをポケットにしまった。


少し気になったのでそのことをケイイチと相談しようとしたら、すごい叫び声(?)が部屋の外、おそらくは工場のメインエリアのほうから聞こえてきた。


まるで絞り出すような叫び声だ。


それを聞いて猿元さんは「おー、はじまったねー」と言って書類片手に立ち上がった。


その際に時計をチラ見した。ボクらも時間が気になった。


この頃はそんなに珍しくなくなった宇宙標準時表示だった。もはや地球標準時はローカルタイムになりつつあった。


この前はどちらの時間を採用するかで国と国とが戦争になった。時間って恐ろしい。


ドッカーンと、今度は何かが激しく壊れる音が聞こえてきた。同時多発的に、だ。


しかもそれがモーニングルーティンのようにまるで工場内の空気を乱さなかったのが逆に怖かった。おそらくはいつもの音なんだ……。


「それじゃあ、作業場へ案内するよ」


猿元さんはウォージャンキーのようにさらりと言った。




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