第6話 面接室へ
面接室へと移動する。
ボクらは先を歩く猿元さんについていく。
まっすぐな通路なのにまるでQRコードの中を歩いているみたいだ。
壁には今月の目標がたくさん剥がされたあとがあった。足音が必要以上に響く。
猿元さんは後ろ手を組みながら後ろのボクらに「あんまり工場みたいじゃないでしょう」と自嘲気味に言った。
表情が見えないのでどちらに答えるのが正解かわからない。だからお化け工場らしいですねとはとても言えない。
「は、はぁ」
「ずっと昔はね、ここは
「ああ、それなら学校で教わりました。どんな物からでも野菜をつくれる技術ということで理科で実習しています」
ボクらは元気よく答えた。『しおり』にそうしなさいと書いてあった。
「うん、そうか、最初は怪しげなエセ科学扱いもされたりしたんだ。いろいろとここは科学の発展に貢献したんだけどね、今はもうその程度の技術だけではAI主体の工場に負けてしまうからね。全く別の独自の生産方法をとっているんだよ」
そこで一度猿元さんは上半身だけこちらを振り向いてまたすぐに前を向いた。
「じゃあ、この工場はAIに頼っていないんですか」
ボクらは元気よくきいた。『しおり』には当てられた人がきくことと書いてあった。
「ああ、まったく頼っていない」
「おー」とボクらはうなった。
人手不足なのもそれで理解した。てっきりお化けはAIの力を借りてできていると思ってた。ボクたちが怖がる物を分析してもらった上で怖がってるはずじゃないのだろうか。
猿元さんはボクらのリアクションに満足したらしくアハハハハと細かく刻むように笑いながら歩いた。
後ろから見てもセンター分けとわかる髪型だ。
着いた部屋の入り口には応接室と書かれていた。ドアが外されていてなかった。取調室ではないとは書いていない。
「さあ、二人とも座って」
ボクらはボクらには少々大きすぎるソファに並んで座り、猿元さんは対座した。生まれて初めての面接というのも社会科見学のうちだ。
部屋には最初の練菜と題されたブロッコリーのブロンズ像が飾ってあった。まずはブロッコリーからはじまったようだ。
「こほん」と猿元さんが咳払いをしていよいよ採用面接がスタートした。
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