第4話 工場の内部へ

入り口のドアは並んで二つ。さすがはお化け工場だけあってドアガラスは適度に割られている。


「ねえ、お化けってなんで裸じゃないと思う?」


ケイイチらしい疑問だった。


「わかんない。恥ずかしいから?」


「ぼくも知らない。でも工場はここにある」


「うん、そうだね」


ボクらの朝からのワクワクは持続していた。


実は常日頃から考えているイタズラがあって、それは『どこでもドア』のすぐ向こう側にもうひとつ『どこでもドア』を並べておいて、知らずに入った人が「ここでもか」って思う仕掛けのやつ。


実際のところ今日は、右側のドアからボクが、左側のドアからケイイチが入った。ドアノブは冷たくて扉は重い。


ガチャ、ギィー。


中にはいったところで、バタンッ、バタンッと背後で閉まる音がした。これでボクらはもう社会科見学に閉じこめられたわけだ。


「やあ」


「やあ」


とボクらは再び出会った。


建物は奥行きがけっこうありそうだ。


「実はここで待っていろと言われたんだ」とケイイチ。「でも、その『ここ』がこことは思わなかったんだ」とも言った。


「なんだそっか、了解」


しかもケイイチは二人分をさっきの求人に応募しててくれたみたい。担当は猿元さんという男の人。


ケイイチはその電話の際に、好きな野菜は何かと唐突にきかれて、ブロッコリーと答えればよかったのにピーマンと答えてしまったと悔やんでいた。


「だから今日の社会科見学のおみやげはピーマンかも、ごめん」


「げー、了解」


薄暗さはそのとき感じた。でもお化け工場にしては明るいほうかもしれない。



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