第3話 お化け工場だった
到着するまでは目を瞑っているゲームをしていた。バスは意外にもすぐに目的地に着いた。まだ学区内だと思う。
バスから降りるときはジャンプして降りた。まだ目を薄目しか開けてなかったので、そこでしっかり開けた。
──え⁉ ここなの⁉
驚いた。だってここはよく知っている川沿いの工場だったから……。
『お化け工場』
ボクらはそこを昔からそう呼んでいた。
もう少し詳しく言うと、それはいつもよく通るところにある工場で、地図記号の工場のやつみたいなギザギザのあるその外観は、明るいときでも薄暗くて不気味な雰囲気を漂わせているところ。
だから、そういったイメージからボクらはきっとこの建物の内部では“お化け博士”がたくさんのお化けを生産して世界中に送り出しているんだろうという推測からその呼び名になった。
でもまさかこことはね。
逆にボクたちはハイタッチしたよ。
だってつまりは今日の社会科見学は『お化け工場の秘密』に正々堂々と迫れるわけで。
ちょーラッキーなわけで。
で、ボクらはチヨコレイトのチの第一歩みたいな一歩で敷地内に足を踏み入れた。守衛さんはいなくて、緑が少なかった。
少し歩いたところで、落とし物の隕石を拾った。たぶんボクら以外の人は落とし物とは思わないかもしれない。保育園の時、AIがバグる隕石をポケットにお守り代わりに入れていたのに似ていた。それは没収されてしまった。いや、先生にプレゼントしたんだっけな……忘れた。
建物までの前庭をさらに歩いているとケイイチが「これを見て」と言って、求人のチラシを見せてきた。たまたま家のポストに入っていた物をおにぎり包みように持ってきたらしい。チラシにはこの工場の写真。と米粒。
なんてタイムリーな。
ところでここはそんなに人手不足なんだろうか。今時、そんな人手がいるところなんてないはずなのに。
ケイイチは歩きながらそれを読み上げ、ボクは同じ速さで目で追った。
『未経験者大歓迎☆年齢性別不問☆国籍不問☆ボーナス昇給有☆
読み終わったところでチラシから目を上げると学校くらいの高さの工場の前まで来ていて、その入り口があった。
もっとたくさんのツル植物が外壁につたって壁面緑化しているかと思った。
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