第4話:なんでこいつがってやつほど、意外に人気ある。
第4話========= =====================
なんでこいつが?って奴ほど、意外に人気ある。===================== ============
小鳥はさえずり、雲一つない快晴
太陽は顔を出し始めたばかりで、外ではスーツを着た人間が道を急いでいる
(人間は不便ですね。自分から出る老廃物で衣服を汚してしまうとは。)
いとまはそんな外の喧騒に時折耳を傾けながら
終の洗濯物を畳んでいた。
(...私達 i-Tomaシリーズも、人間らしさがより求められるようになれば、こういった機能も実装されていくのでしょうか?)
彼女はTシャツを一枚手に取り、つまらなそうに眺めながらそんな事を考える。
i-Toma の役割はあくまで”人間の良き交流相手になる”事であり、家事をする必要はない。
しかし、人間と共同生活をする為に必要な、最低限の生活能力が備えられており、こうして家事を担う事もある。
特にいとまの場合『何もせずに家に置いて貰うのは嫌』という理由から、率先して家事をこなしている。
(こうして家事でもしないとご主人様と同じになってしまいますからね。
...こんな、)
>終
『ワぁ!いとまさんのココ、やわっっこいナッ!!(歯抜けボイス)』
(こんなのになりたくない…)
正座をしているいとまの腰に、後ろから手を回し抱きつく終の姿がそこにはあった。
>i-Toma 20SK型
『...ご主人様、邪魔です。離れてください。』
>終
『ヤだ!ここに住むの!』
>i-Toma 20SK型
『私の腰に定住する前にすべきことがありますよね』
>終
『ニートの私に”すべき事”なんてないです!』
>i-Toma 20SK型
『仕事』
>終
『しぃご…とぉ?』
>i-Toma 20SK型
『その現実に向き合わないようにIQを下げるやつやめてください』
>終
『あぅ〜』
>i-Toma 20SK型
『あぅ〜じゃなくて。』
ここに来てから数日、家事をこなしながらご主人様の生活サイクルを観察してきた。
働きもしなければ、掃除も料理もしない。
一日の大半をベットの上でYotubeを見ながら過ごしている。
最近のお気に入りは長距離トラック運転手が昼休憩でご飯を食べる動画らしい。
引きこもりのくせに一丁前に開放感は味わいたいのだろうか?
(ともかく...)
>i-Toma 20SK型
『ご主人様、真剣に言いますけど
働いてもらわないと私達この部屋に住めなくなります。
私嫌ですよ、生まれてすぐに野良アンドロイドになるの。』
>終
『う〜ん...それは大丈夫、収入源はあるから。
いとまさんを野良ドイドにはしないよ。』
>i-Toma 20SK型
『本当ですか?とてもお金を貰えるような生活ではなかったと思いますけど...
あとしれっと私をイラつかせる略称をしないでください』
>終
『野良イド』
>i-Toma 20SK型
『略し方の問題ではないです』
>終
『じゃあ好きって言って』
>i-Toma 20SK型
『国語辞典 頭にねじ込まれたいんですか?
もう少し文脈を大事にしてください。
“じゃあ”ってそんな無敵接続詞じゃないですからね。』
>終
『私のいとまさんへの愛に比べたら”文脈”なんて
"芸能人の不倫"くらいどうでも良くない?』
>i-Toma 20SK型
『確かに人のち●こがどこに入ろうが興味ないですが
ストレスのない会話は大切です。』
>終
『どうして!?
私はこんなにもいとまさんを愛してるのに、何が問題なの!?』
>i-Toma 20SK型
『存在』
>終
『そんざい...』
なぜ単語を省略しただけで自分の存在が否定されたのか。
どこでルート分岐を間違えたのかと、終が思案していると
<<ピンポーン>>
インターフォンが鳴った
>i-Toma 20SK型
『郵便ですかね、ご主人様何か頼みました?』
>終
『う〜ん...かも〜』
>i-Toma 20SK型
『私、でてきますね』
腰に纏わり付く終を引き剥がし、立ち上がる
>終
『私のお腹が〜』
>i-Toma 20SK型
『あなたのじゃないです』
玄関に向かういとま
>終
『...ん?ちょっと待って』
終が突如、いとまのスカートの裾を掴む。
>i-Toma 20SK型
『なんです、今度はスカートに住むんですか?』
>終
『それも捨てがたいけど、そうじゃなくて』
考えてはいるんですか
>終
『...今日って何曜日?』
普段ヒキニートで曜日なんか気にした事がない人が、今日に限ってどうしたのでしょう?
>i-Toma 20SK型
『土曜日ですけど?』
>終
『ふ〜ん...私が出てくる』
>i-Toma 20SK型
『曜日によって対応するかどうか決めるってなんですか。宗教ですか?』
>終
『イトマさん?
理解しがたい事を宗教で片付けるのはやめて。
いや、なんというか...なんとなくだよ...』
先ほどまでバカみたいに腰にしがみ付いていた人とは思えないほど、慎重な様子で言葉を選んでいるご主人様
...なんか怪しいですが
人と会う機会のないご主人様にとって貴重な接触でしょうし、任せますか
もしかしたら”叡智”なものを頼んでるのかもしれない
ここは何も言わず引き下がるのが吉です
>i-Toma 20SK型
『分かりました。じゃあお任せしますが
土下座は三回までにしてくださいね。』
>終
『一回もしないよ!私をなんだと思ってるの!』
>i-Toma 20SK型
『私の前ではよくしてるじゃないですか』
>終
『イトマさんへの土下座は土下座じゃない!
求・愛・行・動!』
>i-Toma 20SK型
『知り合いの露出狂が同じような事言ってました』
〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ご主人様が席を立ってから数分後…
いとまは洗濯物を全て畳み終え、一息ついていた。
(これで、あらかた終わりましたかね。それにしても)
>終
『…!…、…!!』
玄関の方がやけにうるさい。
(郵便物の受け取りにしては時間が掛かりすぎてますし...
少し様子を見に行きますか。)
いとまが玄関を覗くと、、
>終
『…だから…今日はだめ….明日…明日なら良いから…!』
なんかご主人様が浮気クズみたいな事を言ってました。
>i-Toma 20SK型
『ご主人様、どうされましたか?』
>終
『い、い、い、いとまさん!
なななななんでもないなんでもない!くつろいでて〜〜!』
玄関の扉を背にどもりまくるご主人様
いとまの前に立ち塞がり、ドアを隠すようにして狼狽している。
…怪しい
>i-Toma 20SK型
『ご主人様...
何か私に隠してませんか?』
>終
『か、かくしてる、隠してる!?こちとらニートですよ?
隠してるも何も、はなから何も持っちゃいないです!
恥も労働も全て現世に置いてきました!』
>i-Toma 20SK型
『今からどちらか一つだけでも拾ってこれませんか?』
少しでもご主人様を真人間にしたいいとまだったが、
(ん?…ドアが少し開いてる)
終が背に隠してる扉に隙間があるのを発見する。
>i-Toma 20SK型
『...どなたかいらっしゃるのですか?』
>終
『は、はぁ〜〜!?だ、だ、だ、誰も〜!?
誰も来てませんけど〜〜!!??』
>???
『おねぇちゃん?』
ドアの向こうから可愛らしい声が聞こえる
『…』
『…』
見つめ合う二人。
達人同士の仕合のように互いに一歩も動かない
>i-Toma 20SK型
『ちょっとそこどいてください。』
先に仕掛けたのはいとま
>終
『だ、大丈夫だから!
大した事じゃないから』
ドアを開けさせまいと抵抗する終...の頭は、いとまの右手に掴まれそのまま右にスライドしていく
>終
『ギギギ...こ、これがUFOキャッチャーの気持ちぃぃ...』
邪魔者をのけた先には…
>???
『はじめまして』
幼女がいた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
■リビング
謎の幼女はいとまが部屋に招き入れ、ソファーに座らせた。
彼女の隣には、ちんまりと縮こまったご主人様が。
いとまはそんな2人と向かい合う形で、もう一つのソファーに背筋を伸ばして座っている。
>i-Toma 20SK型
『なぜ、彼女を私から隠そうとしたのですか?』
>終
『いや...別に隠した訳じゃ...』
(日頃から変な所で肝が座っているご主人様が、少女一つであの慌てっぷり...
...匂う、腐った油のような匂い...これは...終わってるヤツの匂い(花●夏樹ボイス)
きっと、ご主人様は私の目に触れさせたくない どぎつい"何か"を隠してるに違いない。)
自らの主君の世話をしている内にいつの間にか身につけた●滅センサーで、終わってる匂いを嗅ぎつけたいとまがご主人様を詰めていると
>???
『あの…』
空気に耐えきれなくなったのか、幼女が声を発する
>???
『お姉ちゃん...この人だれ?
お姉ちゃんのおともだち?』
幼女は終に質問しながら、そのまん丸な目でいとまを覗く。
幼女の顔立ちは幼いながらも既に整っていることが分かる。
白く細い髪は、窓から差す日の光に照らされキラキラと光った。
芸能界の量産型1000年に一度とは比べものにならない、
こういう子を”美少女”と呼ぶのだろうといとまは思った。
>i-Toma 20SK型
『いえ、友達ではありません。』
>終
『恋人だよね?』
>i-Toma 20SK型
『大いに違います。好きあらば既成事実作らないでください。
私は “i-Toma 20SK型”です。
見ての通りアンドロイドで、今は終さんの身の回りのお世話をしてます。』
>???
『アンドロイド...』
幼女はいとまをしげしげと見つめ、
>???
『きれい…』
一言、感嘆の声を漏らす
(...なんです、この可愛い生き物は。)
表情を一切崩さなかったいとまだったが、心の内では相当な衝撃を受けていた
(アンドロイドに母性本能などないはずですが、この幼女は無性に守りたくなります。この人がご主人様なら良いのに...あんなのじゃなくて。)
>終
『何言ってんの〜、”ようか”も綺麗だよ〜!』
いとまがしばらく物思いに耽っていると、あんなのが幼女に抱きついた。
抱きつかれた幼女は嬉しそうな顔でそれを受け入れる。
(...ずいぶんと仲が良いんですね。
少し怖いですが、ここらでハッキリと聞いてしまいましょう)
>i-Toma 20SK型
『あの、すみません。
ようかさん?...はご主人様とどういったご関係なのですか?』
いとまは真剣な面持ちで幼女に問いかける
>終
『あれ?もしかしていとまさん...
私がようかに盗られると思って嫉妬してるの〜?』
いとまの質問に対し、終がニタニタとウザったい表情を浮かべる
>i-Toma 20SK型
『違います。ご主人様のような人間に普通の交友関係を築けるはずがありません。
話によっては、ご主人様を警察に突き出さなければいけませんから。』
>終
『信用ないな!流石の私でも幼女はギリギリ避けるよ!
そんなとこに手を出すわけないじゃん!』
ギリギリではなく、余裕を持って避けて欲しい
>終
『この子は“
隣の部屋に住んでて
私が暇な時に一緒に遊んだり、宿題を見てあげたりしてるの。』
>陽花
『おねぇちゃんすごい。
私が知らない面白いあそび、いっぱい知ってるし。
むずかしい宿題も一緒にしたらかんたん。』
なんと、ご主人様が近所の優しいお姉さんポジとは
>陽花
『そういえば今日は宿題教えてもらおうと思ってた。
おねぇちゃん、手伝って』
>終
『あっ…う〜ん、やろっか』
陽花が手持ちカバンから可愛いらしく飾りつけられた四角い端末を取り出す。
>陽花
『どうしてもこの問題が分かんないの。おしえて?』
>終
『あ、ふ〜ん。これ系ね。はいはい。』
ご主人様は声を上ずらせながら端末を見ている。
二人の後ろに回り込み宿題を覗き込むいとま
(これは…確か過去の東大の受験で出た問題じゃないですか。
しかもかなりの悪問で、この年に解けた人は少なかったと聞きました...)
とてもじゃないが、この年齢の女の子が解けるようには思えない
もしかすると幼女はかなり高い学力を保有しているのかもしれない
(近頃の子供は頭が良いんですね。
私はインターネットに接続できるので、こんな問題どうにでもなりますが、このレベルの問題を教えることができるなんて...ご主人様以外と頭良かったんですn..)
>終
『”ミニマム”』
>陽花
『なるほど...つまり視点を変えてみろってこと?』
ん?
>終
『”ハートピース”』
>陽花
『何かが、足りない?』
この人…
>終
『”アンロック”』
>陽花
『そういうことか...おねぇちゃん、やっぱりすごい』
東大レベルの難問のアドバイスを、“二●国 漆黒の魔道士”に出てきた魔法の術名だけで乗り切ろうとしている
いや確かに全国の少年少女に大切なことを教えてくれた名作RPGですけど、
当時はその映像美と圧倒的な世界観で世間に衝撃与えましたけど、
流石にこんなので解けるわけな...
>陽花
『とけた。』
>i-Toma 20SK型
『嘘でしょ。』
いとまは思わず陽花の手から端末を奪い取る
>i-Toma 20SK型
『...合ってる』
信じられないが、陽花はあの意味不明なアドバイスを元に難問を解いてしまった
しかもこんな短時間に
>陽花
『おねぇちゃんやっぱりすごい。
一人だといくら考えても分からなかったのに、嘘みたいにとけた。』
>終
『す、すごいでしょ〜』
チラチラといとまの顔を見ながらぎこちなく笑う終
>陽花
『おねぇちゃん、次の問題もおしえて。』
>終
『う、うん』
…まぁ、発想は何がキッカケになるか分からないですし
この子にとってご主人様が良い刺激になるのならそれもいいでしょう
>i-Toma 20SK型
『私、お茶淹れてきますね』
マジック●スターを後ろに隠しながら適当な術名を唱えるご主人様を横目に、いとまは台所へと向かう
(方法はどうあれ、他と交流を図るのはご主人様にとってプラスになる。)
急須から二人分の湯のみへ、鮮やかな緑色のお茶が注がれる
(ご主人様もあの子供に嫌われたくないのか自分なりに頑張ってますし...今日はご主人様の好物でも作って上げましょうか)
お盆にのせた湯のみから立ち上がる湯気を顔に受けながら、リビングへと戻るいとま
>i-Toma 20SK型
『ご主人様、今日の夜はシチューにしましょうか。
よろしければ陽花さんもご一緒にいかがです...か』
いとまは自分が今見ている光景を数秒、処理できなかった
幼女が札束を手に持ち、ソファーの上に立っている。
それも衝撃的だったが、いとまが何より驚いたのは
そんな幼女を前に騎士のように跪き、幼女から札束を受け取ろうとするご主人様の姿だった。
>i-Toma 20SK型
『…ご主人様』
>終
『ふおぉ!!
い、いとまさん!は、早かったね〜』
>i-Toma 20SK型
『何を...されてるのですか?』
>終
『え、え!?い、いや…! ストレッチ!そう、ストレッチ!
この前テレビで見たんだよね〜幼女に札束持ってもらうと、アキレス腱がよく伸びるって〜』
>i-Toma 20SK型
『...そうでしたか 』
いとまは優しく微笑む。
>終
『そ、そう!』
>i-Toma 20SK型
『ところでご主人様、今夜なんですけど』
>終
『あ、あぁ!聞いてたよ!今日シチューなんだよね?
私の好きなもの作ってくれてありがとn...』
>i-Toma 20SK型
『釘でもいいですか?』
>終
『イトマサン?クギハタベモノジャナイヨ?
でもまだ疑問形でよかつた。危うく口以外からも呼吸できるようになるとこだったよ。今からキャンセルできますか?シェフ?』
>i-Toma 20SK型
『すみません、”釘でいいですか?”ではないですね。釘にしますね。』
>終
『釘で"のどあな"確定!?』
第4話 ======== =====================
なんでこいつが?って奴ほど、意外に人気ある。===================== ===========完
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