第2話 ツリーとの出会い
12月になり、いよいよ冬も本格的になってきた頃。校庭に植えられた木は全て枯れ、茶色い葉っぱが風に乗って舞う。なかなか冬らしい静けさだ。この学校にも冬がきたようだ。
5年B組で教室では、そんな外の静けさとは裏腹に、かなり盛り上がっていた。人々の声が飛び交い、いかにも小学校らしい。
そして、この物語の主人公は、この教室にいる。後ろの席で友達と話している、男の子。彼がサトシである。灰色の長袖シャツと、茶色い長ズボンを履いている。元気に友達とふざけ合っており、楽しそうだ。
しかし、彼は時々視線をずらす。前の方で友達と話している、ある女の子へ、時計を見るフリをして、キョロキョロ見る。
彼女はミカ。黄色いニットの服に、茶色いジャケット。チャック柄のミニスカートを履いている。実は、サトシは彼女のことが好きなのだ。
それは、少し昔のこと。サトシが重大なミスをして、酷く落ち込んでいるところを、ミカが慰めてくれたのだ。その時は一部の男女が声をかけてくれるだけだったが、彼女は寄り添って、話を聞いてくれたのだ。
それ以来、サトシはミカが好きになった。
「おい聞いてんのか?」
「え⁉︎ああごめんて。聞いてなかった」
「ああそうかよ。じゃあもう一度言う。土曜日2人でミライ屋行こうぜ」
「おん、いいよ。……
「そうだよ。じゃあ待ち合わせ場所はすぐ近くの広場な。時間は5時25分で」
「OK」
約束をした後、サトシはしばらく辺りをウロウロし、チラチラとミカを見る。次が国語の授業なので、辞典や教科書を運びながら。
土曜日、友達と2人でミライ屋へ行く日だ。サトシはミライ屋近くの広場にやってきた。
「まだあいつ来ないのか」
サトシはクリスマスツリーの下のベンチに座った。彼もまた、リア充を憎む非リア充である。
「………(リア充がいっぱいいるなぁ…)」
ずっとリア充を見てると怪しがられるので、ところどころ目線をチラつかせながら、友達を待つ。しかしチラつかせた先にカップルがいるほど、広場はリア充だらけだった。
「(どこを見てもカップル……)」
「今どこを見てもカップル……って考えたな?」
「…⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
突然声がしたかと思うと、クリスマスツリーの幹にギョロリと一つ目が現れた。
「ファ⁉︎お化け⁉︎⁉︎」
「フフ、今の時代、リア充を憎むのは人間だけじゃないぜ?」
クリスマスツリーは、共に非リア充仲間になろうと、誘っているらしいが、サトシには訳がわからなかった。それどころか、恐怖で体が震えていた。
「寒さで震えてるのか?それ」
「いや、なんでも!ありません!!!!!!」
「………お前、絶対俺のこと怖がってるだろ!俺は幽霊でも怪物でも死神でもない!最近のクリスマスツリーはリア充を憎みすぎて、魂が宿ったらしいからな。つまり、俺もお前と同じ、非リア充だ」
サトシはほんの少しだけ、状況を理解した。どうやら彼は、魂が宿ったクリスマスツリーの1本だということらしい。
「…で、クリスマスツリーが俺になんの用?」
「いや、対したことはない。俺と共に非リア充仲間になろうぜ」
「やだ」
なんの迷いもなく、拒否するサトシに、ツリーは一気に焦る。今までの余裕はなんだったのだろうか?
「待てよおい。なんでよ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
「いや、俺、好きな人がいるんだ……」
「でもそれ付き合ってるのか??????」
「………………いや」
「ほら見ろ。片思いじゃん」
「でも!非リア充にはなりたくないんだ!」
「人間、最初は誰だって非リア充……だろう?……………………………そうだな、悪かった。じゃあ俺が手伝ってやるよ。片思い中のお前を」
「え?」
サトシは顔を上げた。
「どういうこと??????」
「ちなみに、お前の好きな人は誰だ?」
「…ミカ。佐藤ミカ」
「お前の名前は?」
「平野サトシ」
「ほう、いい名前じゃん。俺は25番。よろしくな。今日から師匠と呼ぶように」
「はい!!!!!!よろしくお願いします!!!!!!」
クリスマスツリーは、彼を納得させた。しかし、内心では…………。
「(間違ったやり方教えて、破綻させてやるwwwww)」
……皆様も恋愛の手伝いするとか言ってくるやつは、あまり信用しないようにしましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます