第3話
暗い空から雨が降りしきる、5月
自転車通学の私とサユは、途中にあるコンビニエンスストアの駐車場で待ち合わせてから一緒に登校するのが日課だった。お互いに自転車なので大して話もできないが、なんとなく始まった習慣にどちらも文句はなかった。卒業するまで続くだろうと思っていた。
その日も私はレインコートを身に着けて、
いつもの時刻になってもサユは現れず、私はにわかに焦り始めた。寝坊したのだろうか。雨の日は窓から入る
なんにせよ連絡がなければ仕方がない。私はサユに『先に行くよー』とだけメッセージを送ってから自転車のペダルを踏んだ。これ以上待っていてはこちらも朝礼に間に合わなくなる時刻だった。
午前中もメッセージに既読は付かず、昼休みにサユのクラスに立ち寄ったら登校すらしていなかった。嫌な予感を抱いて他のクラスメイトに尋ねると、交通事故に
サユが交通事故に遭った。突然の事態に私は寒気を覚えて心臓が弾んだ。スマートフォンに反応がないのは既読も返信もできないほどの
サユの死は授業が終わったあとの終礼の場で担任から伝えられた。3組の村井紗雪さんが今朝、交通事故に遭って亡くなられました。女子生徒の短い悲鳴が聞こえて皆のざわつく声が教室に響いた。ただ、別のクラスの生徒だったので面識のない人も多く、パニックになることはなかった。お
私は同じ部活動だったことを知られていたのか、担任から個別に呼び出されて話を聞いた。事故に遭ったのはサユの家と待ち合わせのコンビニエンスストアとの間にある交差点で、自転車で横断歩道を渡っている途中で左折してきた車に
私は担任からの話を冷静に、恐らく無表情で聞いていた。驚きや悲しみは不思議と生まれず、まるで歴史上の人物の説明を聞いているような気持ちだった。昔この学校には村井紗雪という女性がいて、通学途中に交通事故で亡くなったそうだよ。そんな話を聞いても、へえ、
振り返れば、あの時から私はもうおかしくなっていた。親友の急死というあまりに非現実な事態に
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