シッカリしていない文章
ピチャ
シッカリしていない文章
書きたい形があるのだけど、書く内容がない。
暖房をつけた。今年もサンダルでは出歩けなくなった。手の甲が乾燥してラップのようだ。薄い膜が光っているように見える。
書きたい形というのは、非現代調だ。
一昔前の小説風の文、或いはAIが構成失敗したときの絵。ここにある現代とは違う、しかし異世界でもない。見当たらないけど、どこかにあったはずのもの。それが書きたい。
と、書きたい内容が見つからないので雑談調になってしまった。
まあ、見当たらないということは私も大して見たことはなく、それが再現できるかというと疑問ではある。そもそも私の文体は恐らく一昔前だ。
散文では現代語も使うが、こうして紙を手に取ると文語になるだろう。紙など手に取っていなかった。これはパソコンだ。紙で書いているかのような気持ちで書いているのだ。実際そんなことはほとんどしていないのに。これは、読んだ本がその時代に書かれたものであることに起因しているのだろう。仕方ない。著作物が人に知られて、一般社会に浸透するまでには多少時間がかかっていた。今でこそウェブにアップすることで一瞬にして読まれるようになったけれど。それも、多くの人に読まれるようになるまでには時間がかかるだろう。
しかし、このような何でもないようなエッセーも、好む人は好む。SNSなど、何でもないような愚痴を書くのに適しているだろう。飾って楽しむアカウントの裏で、孤独を嘆くアカウントがある。私なんかは孤独なアカウントにしか出会わない。元来の性質が陰気なもので仕方がない、トホホ。若い男女に紛れ込むには、繕ったアカウントを別個に作らなければいけない。そのままの自分では、そこらのオッサンはモテないのである。
私のだらだらとした日常を好んでくれる人はいるだろうか。この老いぼれには、サラリー・マンなどやっていられないのである。夢、なし、行動力、なし。先生、それイケますよ、と若い子が言ってくれるから、ヨシ、一丁やってみるか、と意気込むことができるもので、彼ら彼女らがいなかったら、ただくすんでいるそこらのシミである。じーさんばーさんにウケても仕方がない。私は若い子にキラキラの目で見つめてもらいたいのである。希望に満ちた、純粋な夢見る眼差しで。ああ気持ちがいい。私がスター歌手か何かだと思わせてくれる。一瞬の酔いを味わわせてくれる。酒なんかより、ずっといい。承認欲求が満たされるのは、自己肯定感に繋がる。さすればこそ、次の作品にも繋がるということである。孫などいなくても、孫の年齢の男女に紛れて、踊ることができる。あのじいさん意外とやるな、とでも思ってもらえれば勝ちである。コアなファンが生まれればこちらのものだ。あとは勝手になんとかなる。社会は意外と、どうして成り立っているのかわからない、適当なものの集まりなのだ。シッカリしていない人間が集まったところで、どうしてシッカリした会社が生まれるというのだろうか。探せばどこかにちゃらんぽらんなところがあるものだ。それを探す無駄な時間を費やしたいかどうかは別として。
今日も私は適当な時間に起きて、適当な喫茶店でコーヒーを飲んで、適当に文章を書く。それでやっていけちゃうところがあるのだ。それでなければ、こんなに人間が繁栄しているわけがなかろう。それとも、世の中シッカリした人ばかりだと思うかね、君。
シッカリしていない文章 ピチャ @yuhanagiya
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