ホットケーキ(4)
三人はテーブルにつき話し出した。
「麻衣ちゃんは色の白い可愛い子だったわ。
私がいたのは一年ほどだった。
ご両親はいつもいなくて私はその留守に面倒を見る感じだったの。」
ミツキは彼女の隣に座りその手を握っていた。
「最初はそうでもなかったけど、
いつの間にか私が帰ろうとするとすごく嫌がったの。
だからホットケーキを焼いたりしてなだめていたのよ。」
ミツキは彼女を見る。
「あれは美味しかったよ。」
浦木はうすく笑った。
「でも麻衣ちゃんが5歳になってしばらくして、
急に私は移動になったの。
そしてすぐに麻衣ちゃんが心臓の手術をするために
外国に行ったと聞いて。」
浦木はため息をついた。
「浦木さん、守秘義務があるので言いにくいと思いますが、」
桂が聞いた。
「麻衣ちゃんの体などにあざなど暴力を受けた跡はありましたか?」
浦木の顔が歪む。
「……ありました。何度も見ました。」
浦木がミツキを見た。
「麻衣ちゃん、ごめんなさい、
私は絶対に怪しいと思っていたの。
ヘルパー紹介所にも何度も連絡はしたんだけど、
上得意だから秘密は守れの一言で……。」
浦木はミツキにすがるように泣き出した。
「うらちゃん、全然良いよ。
うらちゃんはすごく優しかった。
今日も一緒に料理出来てとても楽しかった。」
ミツキは彼女を強く抱いた。
「私も一緒に料理を作っていてどうしてだか
今日はとても懐かしい感じがしたの。
あなたも昔私が料理を作っている時はいつもそばにいたわね。
どうしてそんな気持ちになったのか分かったわ。
今でも何だかよく分からないけど、
ちゃんと大人になったあなたが見られて良かった。」
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