ホットケーキ(1)





すみれヘルパー紹介所はすぐに見つけることが出来た。


「はい、お願いしたいのですが、

少し昔の話ですがうらきさん、うらきよしえさんと言う方に、

母が昔お世話になって大変感じが良かったと言う話で……。」


電話口でするすると話をする桂をミツキは見ていた。


「そうですか、いらっしゃいますか。

ならぜひお願いします。」


電話を切った後、ミツキが言う。


「すごいね、大ウソつき。」

「これが仕事だからな。それでうらきよしえさん、」


桂がメモ用紙に浦木芳江と名前を書く。


「まだそこに所属していたぞ。手がかりが出来た。

さあ、出掛けるぞ。」

「えっ、どこ?」


彼等が1階に行くと桂が奥から自転車を出して来た。


「あっ、この前の。」


先日桂が乗っていた自転車だ。

それはサドルが彼の体に合わず低すぎて漕ぐと足ががに股になる。


「あんた変な格好で乗ってたよな。」


ミツキが少し笑う。


「サドルを差し込むところが壊れてるんだよ。

廃墟から俺が拾って来た。

年代物だぞ。

お前はそっちに乗って来い。」


彼が指さす所に何台か自転車が置いてあった。

みな古い。

ミツキはそれを見たが首を振った。


「私、自転車に乗った事無いんだ。」

「えっ!」


桂が驚く。


「そ、そんな事あるか?嘘だろ。」

「うるさいな、貧乏だったから自転車なんて無いんだよ。」


ミツキが怒る。


「仕方ない、お前は歩いてついて来い。」

「えーー。」


結局昨日のようにがに股で走る桂の後をミツキは追う事となった。

相変わらず変な格好だ。


「変な男……。」


ミツキは呟いた。








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