第36話
「お邪魔します」
「いらっしゃい、雪奈ちゃん」
「今日はお世話になります。これ、どうぞ」
「そんなに気を使わなくてもいいのに。ありがとうね」
今日は前から予定していた雪奈が家にお泊りに来る日となった。前からずっと楽しみにしていた雪奈は昨日からずっとテンションが少しだけ高いし、いつもよりも甘えてくることが多いような気がする。
リビングで少しだけ父さんと話した後に、自室へと雪奈を通す。
「幸人の部屋だぁ.......なんか、すっごく落ち着く」
「そうなの?」
「うん。なんか、幸人がここで生活しているんだなぁって思うと居心地がいいというか。うーん、言葉に表せないかも。とにかく、すっごく落ち着くってこと」
「そっか」
良くは分からなかったけれど、変に緊張されるよりはリラックスしてくれていたほうが、俺も落ち着くからいいけれど。
「お茶とかお菓子持ってくるね。ベッドか、そこら辺に座ってて」
「うん、わかった。ありがとう」
俺はニコニコ満面の笑みを浮かべている雪奈を見てから部屋を出た。
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扉を閉めて部屋を出る幸人を笑顔で見送って、周りに誰もいないことを念のため確認した私は、迷わずベッドへと飛び込んで幸人の匂いを堪能することにした。
告白されたあの日にここでその.......エッチなことをしたけれど、あの時はエッチで頭がいっぱいだったために匂いを十分堪能できていなかったのだ。
「幸人ぉ、やっぱりすっごく落ち着くよぉ」
頭が溶けてしまいそうになるほど、幸せな成分が分泌される。
幸人本人を抱きしめた時の安心感とはまた別の安心感がこのベッドにはあるのだ。
きっと夜になればこのベッドを十分に堪能できる暇なんてないだろうから、今の内にこういうことはしておかないとね。
もう、これだけで幸人の家に泊まった価値は十分にあるのだけれど、今日のお泊りで私は重要なことをしなければならない。私はそのために幸人に駄々をこねてお泊りをさせてもらった。
それは今後も関わってくることだから、今の内に固めておかないといけない。
勿論、幸人とのエッチの時間やイチャイチャする時間が大切じゃないというわけではない。幸人とのイチャイチャは私にとって呼吸をするよりも大事な事だと言っても良い。だが、それよりも優先しておかなければいけないことがあるっていうだけで。
まぁ、その事はもう少し先。そうだな、幸人がお風呂に入った後の事だろうから今は深く考えずに幸人のベッドの匂いを楽しもう。
あぁ、幸せ。
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