第37話

「幸人、お風呂入り終わったよー」

「わかった、じゃあ俺も入ってくる」

「うん、待ってる」


 夕食を幸人、お義父さん、私の三人で仲良く食べ終わり、私が最初にお風呂へ入らせてもらった。


 幸人が私の浸かったお湯に浸ると考えると幸人を染め上げているんではないかという背徳感ですごくてどうしようもなく興奮し、一人で致してしまおうかという考えも頭に浮かんだけれどお義父さんもここを使うし、そういうことをするのは二人の家を持ってからでいいと自分を落ち着かせたのは、墓まで持って行こうと思う。


 お泊まりだからといってはしゃぎすぎるのは良くないし、今から大事な話をするのだから頭を切り替えなければならない。


「雪奈ちゃん、少しだけ話をさせてくれないかな?」

「…はい」


 二人きりで話し合うタイミングは恐らくここしかないと思っていたため、予想はできていた。


 お義父さんが座った正面へと座り、姿勢を正す。


「ごめんね、こんなおじさんと二人きりで話すなんて嫌だよね。でも大切なことだから」

「いえ、そんなこと」


 お義父さんが真剣な瞳で私のことを射抜く。


 普段、幸人と同じ優しい雰囲気を纏っている人とは違い、大人で一人の親としての顔をしている。


「僕が話したいのは幸人のこと。そして、疑ってすまないが、雪奈ちゃんの本心がどうなのかの確認」

「はい」

「…気を悪くしないで聞いて欲しいのだが、その…雪奈ちゃんのお姉ちゃん…幸菜ちゃんが幸人のことを裏切って浮気をしただろう?」

「…はい。すみません」

「いや、そのことで雪奈ちゃんが謝ることは無いよ。だけれど親としては非常に心配なんだ。幸人がまた裏切られるんじゃないか、と」


 私が予想していた通りの内容をお父さんは私に話した。


「こんなことを雪奈ちゃんにいうのは、大人としてどうかと思うけれど、僕には妻がいない。そして、あの子には母親がいない。だから、僕にとって幸人は大切な妻が残してくれた大切なかけがえのない息子なんだ」

「はい」

「だから、雪奈ちゃんがどれほどあの子との将来について真剣に考えているのかを知りたい。もし、邪なことを考えていたり、浮気で傷ついた幸人を憐れんで付き合っているとしたら…別れて欲しい」


 お義父さんはじっと私の目を見つめ、答えを待っている。


 今日じゃなくても、結婚する前には必ずこういう話をお義父さんそれか、絵里さんと話をするだろうなと予想していた。


 だから、私は早めにお義父さんの心のモヤモヤを取ってしまいたいと考えて幸人に我儘を言って泊まらせてもらったのだ。


 こういうことは遅くなればなる程、悪化したりするから早めに解消しておいた方がよいと思うから。


 ほんと、お姉ちゃんは余計なことしかしないよね、本当に邪魔でどうしようもない存在。


 でも、お姉ちゃんが幸人を手放してくれたから今こうして付き合えてはいるんだけれど。


 ふぅ…、私は一つ大きく深呼吸をしてお義父さんの目を見つめ返し、口を開く。


「私は、幸人のことを愛しています。幸人と結婚したいって考えています。ずっと死ぬまで一緒にいたいです。幸人と子供を作って、一緒に暮らして、笑い合ったり、たまに喧嘩することもあるかもしれませんけれど、それでも私は絶対に私は絶対に裏切りません。今は信じられないかもしれませんが、これから積み上げていきます。どうか私たちを見守ってくれませんか?」


 私はテーブルスレスレになるまで頭をを下げた。


「………雪奈ちゃん、頭を上げて」

「はい」

「…雪奈ちゃんの想いは分かったよ。うん、僕は…雪奈ちゃんを信じてみたいって思う」


 顔を上げてお義父さんの顔を見るといつもの優しげな笑みを浮かべて、私を見つめていた。


「ごめんね、雪奈ちゃん。試すようなことをして」

「いえ、私も親だったらそうすると思うので」

「ありがとう。…あ、そうだ。これから私のことはお義父さんと呼んでくれないかな?」

「え!?いいんですか?」

「雪奈ちゃんは幸人と結婚するんだろう?それともさっきの話は嘘だったのかな?」

「い、いえ本当です!!お義父さん」


 やった!!お義父さん呼びを公認してくれた。


「これから、よろしくね雪奈ちゃん」

「はい」


 お義父さんが差し出してきた手を取ろうと手を伸ばそうとしたところで、リビングの扉が開いた。


「父さん、お風呂上がったから入っていいよー…って二人ともどうしたんだ?握手なんかしようとして」

「…なんでもないよ、幸人。じゃあ僕は風呂に入ったからから若い二人でごゆっくり。…あんまり羽目を外さないように」

「うるさい、さっさと入って来い」

「はいはい」


 そういってお義父さんがリビングから出て行ったのと同時に体から力が抜ける。


「はあ…幸人ぉ、私、やったよ。頑張ったよ、褒めてー」

「…?よくわかんないけど頑張ったね」

「うん」


 私はお風呂上がりのいつも以上に格好いい幸人の胸に甘えるように顔を擦り付け、頭を撫でられることにした。


 幸人の匂い、しゅきぃ

 


 

 





 

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