第35話 バカ

 私の居場所は何処なのだろう。


 いつもの自失の天井ではなく、見慣れない天井で一夜を明かした私はポツリと心の中でそう呟いた。


 私はあの日まで記憶を遡った。


 雪奈と幸人が付き合ったその日の夜。


 私はお母さんに呼び出されて、私が本当に幸人と別れたのか、最低なことをして幸人の事を傷つけてしまったのかを聞かれた。


 きっと今更どんな嘘を言ったところで幸人と雪奈の関係によって明らかになってしまうだろうしせめて正直に話すことが今出来る私の最大限の贖罪なのだろうとそう思って私がバイト先の先輩と浮気をしていたことを話した。


 当然、お母さんは私の事を叱った。


 何故、どうして?そんな当然な疑問を投げかけられるが、私だって今思えば何故、どうしてと叫びたくなる。


 あの時は、目の前の事しか見えていなかったし自分の事しか考えられていなかったんだと思う。


 お母さんに自分の悪行を吐き出すことによって勿論罪悪感もあったが、それと同時に何か自分の中で何か荷が下りたような気がした。


 お母さんとの話し合いを終えて、気まずくなった私は部屋へと行きベッドの中へと逃げ込み目を閉じ、イヤホンを付けて自分だけの世界を作り出した。


 部屋を閉じる前に見たお母さんの私を見る瞳を思い出してしまいそうだったこと、そして今日もきっと二人の幸せそうな声がこちらへと届くだろうから。


 何も考えずにそのままぼぉっとしていると通知音が鳴った。


 閉じていた目を開いて、確認すると先輩だった。


『最近、やっぱり元気ないよね?大丈夫』


 そんな内容だったと思う。


 先輩のせいでもあるんですけれど..............とそう思ってしまうのはダメな事なんだ。


 そうやって人のせいにして生きてきたから私はあんなことをしてしまった。完璧で大人に見える幸人と自分を比較して隣に立つことを諦めて逃げた私のせい。


 いつもなら無視をしていたはずだったが、親に私のした最低なことがバレてしまい何かもう何もかもどうでも良くなってしまったのかもしれない。


『大丈夫ですよ』


 そう思ってしまった。


『そっか。あ、そうだ。今度、暇な日に服を買いに行きたいんだけれど、選んでくれないかな?』


 後に考えれば、これもまた家にいずらくなってしまったが為の逃げだったことに気づく。


 私は先輩へと返事を返した。


『分かりました』


『じゃあ、また今度バイトの時に詳しく予定決めようね』


『はい』


 私は悉く二択を外し続ける反省しない本当に馬鹿な女という事に。反省しないどうしようもない人間の屑だという事を理解するのも遅すぎた。


 






 


 


 

 

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