第28話 告白

「はい、これでテストは終了になります。お疲れさまでした。今日はもうこれで帰りとなりますが、早く帰れるからと言って羽目を外しすぎないように、常に我が校の模範となるような行動を心がけてください。それじゃあ、さようなら」


 そう言って壇上から下りて、教室を去っていく先生を見送ってから、俺も自分の席を立って掃除する場所へと向かう。


 みんなはテストから解放されて何処に行きたいだとか、何をしたいだとか言っているが俺にそんな余裕はなかった。


 理由は明確で、今日俺は雪奈に告白をするためだ。


 以前、自分の中で結論を出してテストが終わったら雪奈へと告白すると決めたから、事前準備はしっかりとしてある。


 昨日の内に雪奈には放課後に時間貰って直接話をしたいって伝えているし、昨日の通話の感じからするとある程度雪奈も俺が何を言うのかは察してくれていると思うし、断られないとは思うけれど緊張するものは緊張する。


 直接言わずに通話で言ったりメッセージで告白するという選択肢も無くはないが、こういうのはちゃんと本人の前で言いたいから直接言わせてもらうことにした。


 緊張しているためか、意味も無く何度も同じところを掃き掃除していていたが、いつまでもそうしているわけにもいかない為、大きく深呼吸をして再度気持ちを固めて、集合時間の数十分前には目的地である特別棟の空き教室についたが.........


「せ、雪奈?」

「あ、幸人。テストお疲れ様」


 時間の数十分前にも拘らず雪奈は何事も無く、俺を見つけてそう声を掛けてきた。


 再度気持ちを固めたとは言ったものの、早めに場所に着いて心を落ち着かせようとしていたので驚いてしまった。


「早いね」

「あ、ごめんね。早く来すぎちゃったかな?でも、幸人からの言葉が待ち遠しくて早く来ちゃった」

「そ、そっか」


 そう言って恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに微笑んでそう言った雪奈の顔に思わずドキッとしてしまって顔を逸らしてしまう。


 雪奈もそんな俺の事を見て余計恥ずかしくなってしまったのか、顔をさらに真っ赤にさせて気まずい気まずくも甘酸っぱい雰囲気が流れた。


 お互い、「あ.........」だとか「うん」とか何の意味もない言葉を発しつつ、少し経った後にやっと冷静になれて、雪奈としっかり向き合う準備ができた。


 考えていた言葉だとか、どう言おうとか精一杯考えていたのに今のやり取りでそんな必要なんて今更ないなと物凄く緊張していたのが馬鹿らしく思えてしまう程、俺は自然体でいられている。


「雪奈」

「う、うん」


 雪奈は恥ずかしがりながらもしっかりと目を見て返してくれる。


「好きです。俺と付き合ってください」

「うん、勿論だよ。私も大好きだよ」


 そう言って近づいてきたかと思えば、正面から思いっきり抱きしめられてその勢いのまま唇に柔らかい感触が伝わってきた。


「んっ.........」

「.....せ、せつ.....」

「だぁめ、私、もう止められないかも」


 雪奈はそのまま舌を俺の口内へと侵食させてきた。普通なら雰囲気を壊さず受け入れるところだが.....


「雪奈。だめ、ここ学校だから。誰かに見つかっちゃうかもしれないよ」

「.....そんなの分かってるもん。だけど抑えられないよ」


 切なそうな瞳でそう言ってくる雪奈に思わず、胸がギュッと締め付けられて雪奈とすぐにでも深くつながりたいと思ってしまうが自制心を強く持ってどうにか耐えることに成功した。


「.....いつもお父さんが帰ってくるの夜の七時ごろでそれまで家には誰もいないから、俺の家に行こう?」

「.....うん。行く」


 雪奈の手を握って空き教室を後にしようとするも、ふと誰かの視線を感じてドアの方へと視線を向けるもそこには誰もいない。


 .........気のせいか?


 もし誰かが見ていたのだとしたら、物凄く気まずいところを見られてしまったな。


「早く、行こ?幸人。私、待てない。幸人が大好きすぎて、胸がいっぱいなの」

「うん、行こっか」


 だが、雪奈の切なそうな瞳と色香に飲まれてそんなことは家に着くころにはきれいさっぱり忘れてしまっていた。










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