第24話 プレゼント
雪奈と一緒に映画鑑賞の感想を語り合った後に、カフェから出ることになったが、幸奈はカフェから出るのと同時に、そっと何気なく俺の手を握ってきた。
雪奈の方へと視線を向けると、まるで何事もないような、それが普通の事であるかのようなニコニコとした笑みを浮かべてこちらを見つめてきたので思わず苦笑をしてそれを受け入れることにした。
俺たちはそのまま歩き続け、途中でゲームセンターを見つけたため寄ることにした。
ゲームは比較的好きだし、アニメ的な文化も一応目は通している俺だけれどゲームセンターはあまり来ない為、目新しい物ばかりで思わずきょろきょろとしてしまう。
雪奈も同じみたいで、俺と同じように周りへと視線を送っているみたいだ。
その中で、雪奈はある一つのぬいぐるみに目を奪われたようでふとそこで立ち止まった。
「雪奈、それ欲しいの?」
「え、あ、うーん、気になっただけで、別にいいかな」
雪奈が見つめていたのは小さな熊で、目が大きくクリクリとしていて物凄く可愛らしいぬいぐるみだった。
..........確か、俺は小さい頃にこんな感じのぬいぐるみを中々泣き止まなかった雪奈にプレゼントしたような気がする。その頃の雪奈は臆病な性格ですぐに泣いてしまっていた。
そんな子に今では俺の方が支えられていると言っても過言ではないのだ。人はどうなるかまるで分からない。
俺は、五百円を筐体に入れてクレーンを動かし始めた。
普段クレーンゲームはあまりやらない為に、手古摺ってしまって二千円ほど失ってしまったものの景品は取れたので良かった。
「はい、これ」
「え?」
「あげる」
「ありがとう。で、でもこれは幸人がお金を出して取ったものだから……」
「大丈夫だよ。俺が雪奈にプレゼントしたかったから取ったんだ。でも、いらないんだったら……」
「ダメ!いる、絶対に貰うから」
そう言うと雪奈はクマのぬいぐるみを俺の手から取って、抱きしめて顔を埋め、嬉しそうな顔を覗かせる。
「ありがと、幸人。大事にするね?毎日一緒に寝るから」
「うん」
ここまで嬉しそうな反応をされたらプレゼントして良かったなって思うし、お金以上の価値がある。
その後も二人でゲームセンターを散策して、エアホッケーやバスケットボールを入れて点数を競うゲームをした。結果は、五分五分でいい勝負になっていた。
「あ、幸人。一緒にプリクラとってもいいかな?」
「うん、良いよ」
プリクラなんていつぶりだろうか?最後に撮ったのは確か幸奈とのデートだったはずだから……
と考えようとしたところでそれを頭から追い出した。
今は、あいつとのことを考えることより雪奈とのことを考えた方がいいだろうなと思ったからだ。
筐体の前に二人並んで、パネルをタッチして操作する。
「あ、あのさ…カップルってことで良い?」
「あ、うん。いいよ」
カップル専用のモードがあったため雪奈がそう頬を染めて恥ずかしそうにそう言ってきた。雪奈はそのまま色々と選択してから筐体中へと入って、さっそく撮影を始めるが.....
「さ、流石にキスは.........」
最初はポーズを合わせたりするだけだったものの、段々と要求が過激になっていき最終的にはキスをするまでになっていた。
カップル限定なモードだとしても、色々あったはずなんだけれど.........まぁ、今更何か言ったところで変わらないし、ここはスキップしてとそう思っていたのだが…
「「っ!!」」
頬に何か湿った感触が伝わった。
雪奈の方へと視線を送ると耳を真っ赤に染めて先ほどプレゼントのぬいぐるみへ顔を深く沈めた。
何とも言えない甘酸っぱい空気が二人の間を支配した。
プリクラを撮り終わった後もその空気は続いたが、気まずい空気ではなくそれこそ付き合いたてのカップルの様な雰囲気を感じられて嬉しかった。
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