第23話 心霊写真

『私、あなたとはもう生きていけないの。ごめんなさい』

『でも、それでも俺は..........』


 映画はクライマックスシーンまで来た。主人公とヒロインの今後の運命が左右されるであろう大事な場面である。


 俺は今後の展開を予想しつつ、画面を注視していると隣からそっと手を握られた。視線をそちら側へと移動させると同じく固唾を飲んで主人公たちの行く末を見守っている雪奈が俺の手を握ったようだ。


 無意識の内に何か掴まるものを探して俺の手を握ってしまったのか、それとも意図的に俺の手を握ったのか。


 ……どちらにしても、俺の頭からはすっぽりと今まで集中して見ていた映画の内容がどこかへと言ってしまい、雪奈の手の感触の方へと意識を持って行ってしまう。


 その後、雪奈は俺の手を映画が終わるまで握り続けられ、映画が終わった後もそのまま握ったまま映画館の外に出た。


「せ、雪奈。その..........」

「ん?どうしたの、幸人」

「あー、えっと..........手、繋いでるけれど」

「うん、そうだね」


 俺が繋いだ手の方へと視線を落とすと雪奈はさも当然のように、頷いてそう言った。


「私と手を繋ぐのは..........嫌、かな?」

「嫌じゃないし、手を繋げて嬉しいよ」


 雪奈がいいなら、俺も別に拒むことは無い。


「そっか。なら良かったぁ。じゃあ、映画の感想会しよ?あー、でも幸人はあんまり映画に集中できてなかったかも、ね?」

「それは……」


 確かに最後らへんはずっと雪奈の手の感触で映画の内容何てほとんど覚えていなかった。きっとこの感じだと手を握ってきたのはわざと何だろうな。


 意地悪くそう言ってニヤッとした笑みを浮かべてこちらをみた雪奈に苦笑して一緒に歩き出し、近くにあったカフェによって一休憩することにした。



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 ふふっ、幸人。すっごく可愛いね。


 お姉ちゃんと付き合ってる時に、手なんて何度でもつないだだろうに手を握られてそんな初々しい反応をされたら私、ドキドキしちゃうし頑張って手を繋ぎに行って良かったなって思う。


 幸人には映画に集中できていなかったもんね、なんて言ったけれど私だって本当はドキドキしすぎて幸人以上に集中何て出来ていなかっただろうなと思う。


 私、今スッゴク幸せだな。


 隣にいる幸人を感じることが出来るだけで私はこれ以上にない幸せを感じてしまう。


「どうしたの、雪奈」

「何でもないよ。映画楽しかったなって思って」

「そうだね、凄く楽しかったよ」

「映画に集中できてなかったのに?」

「うっ、それを言われるとその……」

「ふふっ」


 誤魔化すようにして幸人は頼んだカフェラテをそのまま口に含んだ。


 どうかその幸人の可愛い視線の先に陰からこちらを嫉妬の視線で見ている粗大おねえちゃんごみが写りませんように。


 


 


 


 


 



 





 

 

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