第22話 心の整理

 幸奈と別れてから二週間ほど経った。


 相変わらず幸奈が何故か俺に絡んでくることが多くて、嫌になるくらいで他には何事もなく過ごすことが出来た。


 本当にあいつはどうして俺にかかわってくるのだろうか?今更謝ってきたところでこちらとしては迷惑なだけなんだけれど。謝ったからって俺が許すと思っているのだろうか?それともただの自己満足なのだろうか?


 ……まぁ、どちらにしても決して俺があいつを赦すことは無いだろうな。


「おはよ、幸人。一緒に行こ?」

「おはよ、雪奈」


 それよりも今日は、雪奈と一緒に映画を見る日だ。こちらを全力で楽しまないとな。


 どうして雪奈と映画を見ることになったのかと言えば、あれは確か雪奈からの提案だった。


 あの日は二人とも小テストがあって、マラソンの時と同じように小テストの結果が良かったらご褒美を設けないか?という話になり無事小テストで満点を取ったから一緒に映画を見ようということになった。


 ちょうど気になっていた映画だったし、この機会が無くても一人で見るつもりではいたけれど、雪奈と一緒に見ることが出来て嬉しい。


 幸奈と別れてから、いや幸奈と別れる少し前から雪奈と関わることが多くなったけれどやはり俺は……きっと雪奈に惹かれているのだと思う。


 寝落ちの通話をした時からほとんど毎日電話していて、時には父さんと一緒に夕飯を食べたり、登下校もずっと一緒だったり、それに映画を見ると先ほどは表現を暈したものの、今日はデートをしている。


 雪奈と短い間だけれど一緒にいて、安心するし心地が良いって感じるし雪奈の事が可愛くて綺麗に見える。……うん、やはり俺は彼女に惹かれているのだろう。


 

 俺の勘違いじゃなければ雪奈も俺の事を……好いてくれていると思う


  俺は小説やアニメの中の鈍感主人公ではないのだから、ある程度相手の気持ちを察することはできていると思う……と言うのは少し傲慢すぎるだろうか?相手の心が分かっていないから浮気されたんだろうから。


 でも、雪奈に対してまだ告白する気にはなれない。単純に幸奈と別れてすぐであり、節操がなく思われてしまうということもあるけれど、俺は心の奥底では怖いのだと思う。


 …………そんなことは無いことは十分わかり切ってはいるし、雪奈の事は信頼しているしこう思ってしまうこと自体が雪奈に対して失礼だけれど、やはり心のどこかで裏切られるんじゃないのかという小さな疑念がある。


 こんな状態で、雪奈と付き合ったところで長く続くことは無いと思うし、何より雪奈に対して失礼だと思うから。


「幸人、どうしたの?」

「何でもないよ。ただ、今日の映画楽しみだなって思っただけ」

「そうだね。幸人見たいって言ってたもんね。私も見たかったから楽しみ」


 そう言ってニコリと笑みを浮かべた雪奈に思わずドキッとしてしまう。


 今は、そんなことよりも全力でこの時間を楽しまなきゃいけないな。


 俺の手を握ろうとして恥ずかし気にそっと後ろに隠した雪奈の右手を掴んで歩き出した。


 

 








 

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