第21話 楽しみだね、お姉ちゃん。

「幸奈、おかえり」

「た、ただいま」


 私は先輩と別れて家に帰り、リビングへと行くとリビングにはお母さんしかいなかった。


 いつもこの時間は大体リビングに妹の雪奈がテレビを見ていたりするものだけれど、雪奈は何処にもおらずお母さんだけがいた。


 雪奈はいったいどこにいるんだろう?多分、自分の部屋にいるんだよね?もしかしたら自室で幸人と喋っているのかもしれない。あぁ、嫌だなぁ。幸人と雪奈の幸せそうな会話が聞こえてきてしまうことが。


 そんなことを思いつつ、会話の話題としてお母さんに雪奈が何処にいるのかを聞いてみた。


「ゆ、雪奈は何処にいるの?」

「雪奈なら、今日は友達の家でご飯食べて帰ってくるーって言っていたわ」

「そ、そうなんだ。へぇ、と、友達ね」


 雪奈は昔こそ内気な性格で友達は幸人しかいなかったが、今となっては友達も私が知りえないだけでもかなりいるだろう。だから、きっとその友達と言うのは幸人ではないはず。


 うん、きっと違う。


 ...........................................もし幸人と雪奈が今、二人で食事に行っているのだとしたら。いや、もしかしたら幸人の家で唯人さんを含めた三人で食事を取っているのだとしたら?


 きっと、唯人さんには私のしたことが知られていて、さらに慰めて一緒に食事をしている雪奈との仲が深まっていっている。雪奈が着々と外堀を埋めつつ私の事を縛り上げているような気がする。


 せ、雪奈が私に態々そういうことをしていると考えたくはないけれど、雪奈は幸人の事が今でも好きだからそうしてもおかしくはない。


 お母さんを見た感じはまだ私と幸人が別れたことを知っていないようだけれど、それも時間の問題だ。……私は、私の居場所はもうほとんど残っていない。


 そう考えてしまった時に、私は思わず逃げるようにしてリビングから出て着替えをもってお風呂場へと行くことにした。


 すべて脱ぎ終わり、ふとした時に鏡に映った自分を見た。


 ……この体を、最後に幸人に抱かれたのはいつだっただろうか?最近ではないことは確かだ。


 逆にこの体を先輩に使わせたのはいつだっただろうか?私は完全には先輩には許してはいないが、この胸や手、口では先輩に奉仕してしまっている。


 そう考えてしまうと、急劇にこの体が汚いものに思えてしまい、鏡から視線を切って体を洗うことにした。


 全てをきれいに洗い終えた後に、お風呂に入る。


 何もしていないとどうしてもこれからの事を考えてしまって体が全くと言っていいほど温まらなかった。



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「じゃ、幸人。今日の夜、ね?」

「うん。ごめんね、家まで送れなくて」

「大丈夫だよ。ありがとね」


 唯人さん、幸人と一緒に夕ご飯を食べた後、少しお話してお暇させていただくことになった。


 幸人は当たり前のように見送りに来てくれた。帰りで何気ない会話で歩くこの時間すらも愛おしくて幸せ。


「じゃあ、またね?」

「うん、気を付けてね」


 幸人に手を振られて私も振り返して後にする。


 家に帰るまでのこの少しまでの間、私は今日あったことを思い出しニヤニヤしながら、家に帰った後の事を考える。


 確か、あの人はバイトだったはず。とするのなら今はもうお風呂に入っているくらいだろう。私が帰ってきたと知ればきっと一目散に部屋に戻っていく。


 お姉ちゃんは馬鹿じゃないから、私がお姉ちゃんの事を段々と苦しめて行っていることを何となくだろうけれど理解しているだろう。


 だけれど、それに対してお姉ちゃんは何も言えない。言えるわけがない。


 うーん、そうだなぁ。まだお姉ちゃんには苦しんでもらわないといけないな。だから今日も沢山聞かせてあげるからね?


 じっくりと詰ってからお母さんに報告して、家に居場所を無くしてあげる。学校でもすこぉーしずつ居場所を無くしてあげるからね?


 楽しみだね、お姉ちゃん。


 


 

 


 



 

 

 


 




 

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