第19話 行き場のない心

 マラソンの結果はというと、雪奈からのご褒美のおかげもあってか、以前より数十秒記録が良くなっていた。


 ご褒美のお陰でタイムが早くなるなんて我ながら子供っぽいなって思うけれど、素直に喜んでおこう。


 体育終わりにこっそり近づいてきた雪奈が


「幸人はタイム良くなってたよね?私も良くなってたから…今日の夜、また一緒に話そうね。それと帰りも一緒に帰ろ?」


と言われた。


 朝や、他の休み時間にやけに絡んできた幸菜のせいで、少しだけ心がモヤモヤしていたから、かなり心が楽になった。


 それから、他の授業も順調に終えた俺は、雪奈と待ち合わせた場所に行くために、掃除を終えてすぐにその場所に直行しようとしたが…


「あ、あの…幸人」

「…」


  無視をしようと思ったものの、呼ばれてしまうと思わず立ち止まってしまう。


 俺は、振り返る事なく歩き出そうとすると彼女は小さく「ごめんなさい」とだけ言ってそれ以上何も言うことはなく、留めることはしなかった。


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「ごめんなさい」


 私がそう言っても幸人は立ち止まることなく行ってしまった。こうなってしまったのはすべて私のせい。馬鹿で屑な私のせい。


 この行為すら我儘だろうけれど、きっとこの謝る行為が最後の頼みの綱だと思うから、これだけは絶やしてはいけない。


 ..........だけれど、私の心の中はどうしても不安で渦巻いている。


 理由は、昨日の隣の部屋から聞こえてきた幸人と妹の雪奈の楽しそうな会話。そして、朝一緒に仲良く登校していた二人を見てどうしようもなく胸が騒いだ。


 きっと、もう雪奈は私が幸人と別れたことを知っているんだと思う。私が幸人に対して行った最低な行為も知っているだろう。


 雪奈が幸人のことを好きなのを私は分かったうえで、それでも幸人のことが好きで私が幸人と付き合ったのに、あんなことをしてしまったのだ。


 どれだけ雪奈が怒っているのかすらわからない。考えすぎだとは思うけれど雪奈が意図して私に対してあの楽しそうな声を聞かせてるんじゃないかってそう思えたりもしてしまう。


 もしかしたら今日も聞かされるのかもしれない。いや、今日の朝の会話からしてきっと聞かされるのだろう。


 それに、唯人さん、そしてお母さんに私のことが知れたらきっと私はもうどうしようもなくなってしまうだろう。どこにも行き場がなくなってしまう。


 私は鬱々とした気持ちでそのまま今日はバイトのシフトがあったので、学校からバイト先に行く。


 今日は確か..........先輩と一緒の日だ。


 .....................................はぁ、こういうところがきっと私はダメなのだろう。行き場のない私の弱い心が先輩へと流れてしまうところだったのを繋ぎとめた。


 


 


 


 


 


 



 

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