第18話 幸せの子守歌。

「えぇー、今からグラウンドを六周してもらう。嫌だとは思う。先生も学生時代はどうしてただ走らなきゃいけないんだと思ったものだが、まぁ授業でやることには大抵意味のあるものだから、頑張ろうな」


 先生のそんな言葉に不満を漏らす生徒も幾人か居たが、まぁ文句を言ったところで授業内容が変わるわけでもないから、特に何も不満を漏らすことなく俺は定位置に着いた。


 それに今回のマラソンで前よりも記録を伸ばすことが出来れば、ご褒美があるからいつもより断然やる気はある。


 位置について、友達と適当に喋っているとふと視線を感じてそちらの方向へ視線を動かすと、雪奈がこちらへと視線を向けていて視線がぶつかった。雪奈とは違うクラスではあるが、体育は合同である。


 俺と目が合うと雪奈は、小さく胸の前で手を振ってくれたので俺もそちらへと手を振り返す。


 すると、嬉しそうに笑って口パクで頑張ってと言ってくれた気がする。


 よし、かなりやる気出てきた。


 先生の掛け声と同時に一斉にスタートした。



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 男子のマラソンは終わり次は女子が始まった。


 いつも幸人の事を見てたけれど、今日はいつも以上に頑張ってくれていたような気がするのは流石に思い込みが激しいかな?


 でも私の応援とかご褒美の為に頑張ってくれたらいいなって思う。


 勿論、私も自己ベスト更新を目指して本気で取り組む。私も幸人からのご褒美がかかっているのだ。全力でする以外に選択肢はない。


 中盤に差し掛かり、自分のペースを維持しながら走っていると後ろから誰かが来て隣に並んだ。


「......雪奈」

「……ん?どうしたの、お姉ちゃん」


 隣に並んできたのは、お姉ちゃんだった。


 私は険悪感を堪えつつもお姉ちゃんの内心の事を考えて、ざまぁ見ろと思いつつ何事もないように返事を返した。


「え、えっと、その……」

「どうしたの?」

「えぇーっと……」


 きっと、私がお姉ちゃんが浮気をしたこと、幸人と別れたことその事や色々と私に聞きたいのだろうが、どの程度私が知っているのか分からない為、言葉が思いつかないのだろう。


「ごめんね、お姉ちゃん。私、このマラソン頑張らなきゃいけない理由があるから先に行くね」

「え、あ、そ、そっか」


 きっと私たちの登校をつけていたお姉ちゃんはきっと私が何の為に頑張っているのか分かっているはずだ。


 今日も絶対に私たちの幸せな声を聞かせてあげるからぐっすり眠ってね。私たちの幸せを分けてあげるからね。


 


 


 


 

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