第13話 蜜に浸され腐れ切る
私と同年代であるにも拘らず、私よりもずっと大人な幸人とそれとは対照的に私よりも年上なのに言い方は悪いがダメダメな優斗先輩。
そんな優斗先輩の事が好き……とまではいかないものの、気になってしまう程に私はなってしまっていた。
勿論恋人の幸人の事は大好きだ。笑う顔は好きだし、記念日も大切にしてくれるし私の事を一番に考えてくれているんだなって言うことが言葉と態度で伝わってくるし、愛してくれているのが分かる。
だけれど、私には幸人という一人の男性が私には不釣り合いなんじゃないのだろうかと思えてしまった。何もかもが私より大人っぽくて完璧に見える幸人。
そんな人に私はお似合いなのだろうかという小さな疑念がムクムクと芽生えた時点で本来私は幸人へと相談するべきだったのだ。
小さな私なりの意地を張って、幸人にそんなことを相談するのは良くない。……いや、その行為こそ自分が幸人に釣り合っていないと認めているような気がしてならなかった。
そんな私の子供っぽい意地。
その小さな意地が余計自分が子供っぽく見えてしまって惨めな思いになった。
さらに言ってしまえばきっと、私が幸人の隣に相応しい女性になると意気込んでもっと自分磨きをしていればこうならずに済んだのではないかってそう思う。
私は自分が幸人の隣に立つのではなくて、安直な考えでそこから逃げてしまっていた。
思えばそこが岐路だったと後になって思う。
段々と優斗先輩との時間が増えて行き、幸人との時間が減っていった。幸人が私に対して嫉妬してくれている事、そして年上が私を頼ってくれて私と言う人間はダメな人間ではないのだと言う自尊心を満たした。
そんな甘い汁を吸い続けていた私はついに優斗先輩と話の流れでデートへ行き、そして手を繋ぎ、相手からされたとは言えキスまでしてしまった。
その日はきっとどうしようもない罪悪感に苛まれながらも、次の日に幸人と何気なく会って話すことの背徳感が気持ち良すぎてどうしようもなかった。
一度楔が外れてしまえば後は堕ちていくだけだった。優斗先輩と言う自分よりもダメな大人な人を甘やかすことによって私は自尊心を維持して、優斗先輩を甘やかすことによってその背徳感で私の倫理観は壊れていった。
優斗先輩とは体を赦すことまでは流石にしていないが、それ以外の事ならばもう何度もしてしまっている。体を許さないことこそが私の最大の線引きだった。
私が体は許していないとはいえ、してはいけないことをしているのは重々承知だった。だけれど、もう止まれなかった。甘い汁を吸い続けた私の頭は腐りきっていた。
幸人に冷たく当たり、優斗先輩には優しく接する。そんな日々を過ごしていた時、雪奈からこんな事を言われた。
「幸人が、最近、お姉ちゃんが冷たくて辛い、別れたくなってきたって言ってたよ。友達と遊ぶこともいいけれど、幸人のことも考えないとダメだよ」
雪奈からそんな事を聞いた私は、幸人へとすぐにメッセージを飛ばした。
優斗先輩の事を良く思ってはいても、幸人のことが大好きなのは変わらなかったから。
『今日、デートしない?幸人の家でも私の家でもいいから』
今更そんな事を言ってももう遅すぎるというのに。
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