第4話 ドロドロな心。
雪奈に抱きしめられて、数分が経過したところで俺の気持ちも幾分かマシになり、歩けるようになった。
「幸人、まだ辛いでしょ?幸人は休んでいて良いよ。私がお姉ちゃんの不貞の証拠を撮ってくるから」
「……ありがと、雪奈。でも大丈夫。俺がやるよ。いや、俺がやらなきゃ意味がないんだ」
これは俺がやらなければいけないことだ。雪奈に任せてはいけない。俺が自分で幸奈との恋を終わらせるために動かなければいけない。
「そっか。分かった。幸人がそうしたいなら、そうしよ。でももし辛くなったら私がいつでも変わるからね」
「うん。本当にありがとう、雪奈」
「うん」
雪奈の慈愛に満ちた笑みに思わず見惚れてしまう。小さい頃は俺が気の弱かった雪奈を守る側だったのに今では雪奈に守られて励まされてしまっている。
別に悪いことではないんだけれど、なんといえばいいんだろう。感慨深いというかなんというか。
それに……雪奈の胸に抱かれたとき物凄く安心したし…なんだろう。雪奈が可愛くて、物凄く綺麗に見える。
そりゃ、雪奈は元からかなり可愛かったけれど何だろうこの感じ。
.............って、何を考えているんだ俺は。今は幸奈と別れることが先だろうが。
俺は雪奈から顔を反らして、頬が赤いのをバレない様にして幸奈が男と歩いて行った方へと向かうことにした。
きっとこの方角なら映画館の方へと向かったのだろうとそう思い、歩いて行って見るとやはり二人は並んでいた。
俺はスマホを取り出して、バレない様に遠くから拡大して撮ることにした。
ガタガタと手が震えてしまうが、自分の手をもう片方の手でどうにか抑えて写真を撮る。
そんな俺を見てか、雪奈も俺の手を抑えてくれてどうにか写真を撮ることに成功した。
幸奈は笑顔であの良くわからない男と腕を組んで楽しそうに笑っている。頭がおかしくなりそうだった。胸が辛くて仕方がない。
幸奈とあの男が映画を見に入っていったのを確認してから俺たちはその場を離れた。
「もう少し、写真が欲しいな。これだけでも十分決定的だけれど、もっと多く撮らなきゃいけない」
「幸人。今はあの二人は映画見てるし近くでゆっくりしてよう?」
「……あぁ、うん」
焦る気持ちを雪奈が察したのか、手を引いて近くのカフェに入った。
適当に注文してから席へと着いてから一つ深呼吸をして注文したカフェラテを口に含んで乾いていた喉を潤す。
あの二人が出てくる間、特に雪奈との間には会話のやり取りは無かった。
きっと俺の気持ちを察して少しでも整理する時間をくれているんだと思う。本当に雪奈には感謝しかない。
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私は、今どうしようもなく胸の奥がドキドキとしてドロッとした感情が胸の奥から漏れ出してしまいそうでどうしようもなかった。
今、目の前でカフェラテを飲んでいる幸人の顔を見る。
幸人の事は前から好きだったが、今はどうしようもなく幸人の事を甘やかしてあげたいし、何でもしてあげたいという気持ちが止めどなく溢れて仕方がなかった。
私は昔は気が弱くて、何かと幸人の後ろに隠れていた。だけれどいつかは幸人に頼られるようになりたいとそう思って頑張って自分を変えてきた。
こんな状況だけれど、それでも幸人が私を頼って来てくれたことがどうしようもなく嬉しくて仕方がなかった。手を握ったり、抱きしめたりしたとき私は今までの人生の中で最高潮の気分だった。
あぁ……こんなこと思っちゃダメだろうけれど甘えた時の幸人物凄く可愛かったなぁ。私の愛でドロドロに溶かしてあげたくなっちゃうな。どうしようもないくらいダメにして、私無しじゃ生きていけないくらいにしたい。
お姉ちゃん……あんな奴は死ねって思うけれど、幸人を自ら手放してくれて本当にありがとう。私はずっと、お姉ちゃんと幸人の幸せを願ってきたけれど自分から手放したっていうことはそういうことだよね。
もう、隠さなくてもいいんだよね?
...........いや、待って。焦ってはダメ。幸人は今物凄く落ち込んでいるんだから。ちゃんと寄り添っていかないと。
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