武蔵浦和駅から東所沢駅まで

 前述のように旅の始点は武蔵浦和駅にした。駅のあるさいたま市の浦和が武蔵野にあたるかどうかは甚だ怪しいのだが、武蔵とついていて武蔵野線の駅なのだから問題はないと判断した。

 同じ武蔵野線でも千葉まで行くと、そこは武蔵野ではない気がする。あくまで私個人のイメージだが、二十三区と多摩の山の間に広がる平野、それが武蔵野なのだ。


 まず、武蔵浦和駅の変わりように驚いた。高い埼京線のホームから階段を降りて、武蔵野線に乗り換えるには長い通路を歩く必要があるのだが、階段を降りた先がちょっとしたショッピングモール状態なのだ。昔は立ち食いそばとロッテリアしかなかったはずだが、有名ラーメン店もドラッグストアも書店もある。トイレもきれいだ。

 暗かった印象のある通路も、壁がガラス張りになり、駅前の風景が見える。


 武蔵野線のホームは変わらない。西国分寺駅での乗り換えに便利なポイントがあったはずだが、思い出せない。列車が来たこともあり、あまりホームを進めず、後ろの車両に乗る。平日の昼まで混雑はしていないが、席には座らず、まっすぐ向かいドアの前まで進み、誰にも顔を向けないようにする。

 列車が動き出して、窓から見える景色に懐かしさを覚えないことに気付く。なぜだろう。少し考えてわかった。友だちとしゃべっているか本を読んでいるかだったので、沿線の風景など見ていなかったのだ。もったいない。


 9・11の事件を知った西浦和のホームをすぎ、北朝霞に着く。停車中、窓から見える町並みは「はじめまして」に近い。当時はまず乗っていなかった後方車両にいるので、駅前のロータリーが見えないのだ。動き出すと、よく行ったビルは健在だったが、派手な飲み屋の看板は消えていた。新古書店はまだあった。

 次の新座駅ではさらに驚かされる。かつて、漫才の稽古をしていた駅前には映画館ができていた。


 そして、武蔵野線はトンネルに入る。東所沢のホームであることに気付く。

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