第5話 高次元との繫がる第一歩
母が他界し、私の身体は随分と軽く、楽になっていた。
悪霊や、因縁達も出ず日々平穏に暮らし始めていた。
私は母が悪い者を一緒に引き剥がしてくれたのかとさえ考えていた。
そして、それと同時にあの彼を探す。深く焦点を下げ探すが、そこは真っ暗な闇が広がるばかりで彼は勿論、今まで居た連中の気配すらもなかった。
一体何処に消えたのか。。。
そんな頃。私は一人の人物と出会う。
これが、私を大きく変える転機となるのだ。
この人は、私の能力など勿論知らずだった。しかし、気がつくのだ。
私が普通とは違う事に。
「視えない者が視えたり、何かを感じたりするのではないか?」と私に尋ねてきたのだ。
なぜ、わかったのか、私は驚きを隠せず、身の上話をする。
すると、その人は「家系の悪い者がそうしているのか?」そう尋ねてきた。
なぜわかるのか。。
その人に打ち明けた時期は母の一周忌を迎えようとしていた頃だった。
そうして、出てくるのだ再びあの悪霊達が。
今度はその人に向けて悪態をつき、私の口を借り、乱暴な口調で、憎き感情そのままな感じだった。
だが、それでも、あの彼は出ては来なかった。
そうして、私は知り合ったこの方に連れて行かれる事になるのだ。
初めてご縁を頂いた瞬間だった。
そこは、不動明王様が鎮座された、とあるお寺だった。
横一列に並ばれた仏様の中央に不動明王様が鎮座され、私の目の前には「神変大菩薩様」が居られ、左右には「前鬼様」と「後鬼様」が居られた。
私が座った丁度正面には前鬼様が居られ前鬼様に、私は食入られるように見られていた。
そして、「貴女は何をそんなに沢山つけているのか!?」と私に向けて言われたのだ。
初めてまともな神仏様と会話した瞬間だった。
そのお寺には先生と呼ばれる、祈祷して下さる方が居られ、私は今までの経緯を、正直に話した。
初めは私の話を半信半疑だった先生は、「とにかく、ご祈祷しましょう」と言われ、お経を唱え始めた。
そしてご祈祷が終わり、先生は私に向けて話し始めたのだ。
「これは、取り除かねばなりません。」
先生からの話しはこうだ。
ただの因縁だけではなく、悪霊どころか、生霊すらもべったりだと。
そうして、私の本格的な因縁切りとも言える取り組みが始まるのだ。
一回祈祷してもらったからと言って、そんなんじゃ、終わらない。
身体が本当に楽になり、まともな生活が出来るようになるまでは、何年もかかったのだ。
能力はあれども、私には何がどうなっているのかなどさっぱりわからなかった。
ただ、祈祷してもらう度に少しずつ身体が楽になるのと、仏様が悪霊を足で踏みつけるお姿が見え始めたりしていた。
その頃、私が話せていたのは、前鬼様だけだった。
あとは、お寺に連れて行ってくれた方の亡き父様だった。
この亡き父様は、この不動明王様の遣いをしているのが感じ取れた。
私は度々、この父様と会話し、様々な角度からの精神を教わった。
私の精神が安定し始めた頃、私は年配の方々がいる環境に身を置くようになっていた。そして、同時にその背後に居られる亡きご家族からのメッセージなども受け取ったりするように。
ご霊界からのまともな、方々と話せるようにもなっていった。
「どうか伝えてほしい。」と言う、
ご霊界からのその方に向けての要望を察知し、出来る限り信じられる人には伝えてきた。
しかし、私はまたそこで知る事になるのだ。
それは、せっかくのメッセージを誰一人として、自分のものには出来ないという事を。
その人が苦しみを抱え、寂しさを抱え、そしてその方の関係者の霊体からのメッセージを伝えても、
自分本位な解釈しか出来ず、抱える苦しみ等から抜けられない。
私は、
『なぜ人は苦しみからは、脱出できないのだろうか』と考えていた。
やがて、それは私の能力があろうが、いくら能力を使い相手に伝えようとも
本人次第の道しかない。
その事に気付き、知るのだった。
ご霊界の扉を開いたあの日から
既に7年が過ぎていた。。
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