第27話 こういうのは雰囲気からやるタイプ。
龍脈の泉の森から小旅行気分で訪れましたぐらいの距離にある小高い丘の上、ニセ情報でおびき寄せた68体の竜の団体さんが、5キロ向こうの空まで迫ってまいりました。
あいつらは示し合わせて来たんじゃなくて、たまたま出会っちゃったからなんとなく集まって飛んでるって感じだと思われる。見るからに統制なんて取れたもんじゃないからね。
「まぁ、そのほうが狙いやすくて楽っちゃ楽……っと」
ぽえんっ。 ……しゅるしゅるしゅる~。かちょん!
マイ亜空間倉庫から引っ張り出した、ヒトがすっぽり入れる大きさの透明スライムみたいな球状ぐにゃぐにゃ物体。
これは置くだけでぴったりと床や地面にくっついて固定したかと思えば、自由な方向に回転させたり、バイクみたいに乗ったまま地上を移動したりもできるスグレモノ。
巨大ロボットの
今の状態は地面に直接置いて半固定、そこへ私が取り込まれるように入っていって、カウンターのイスに座ったような姿勢で中央部分に。
かちょん! っていうのは身体がロックされましたよというのを知らせる効果音です。
そしてまたもや亜空間倉庫から私の身長ぐらいありそうなバカでっかい銃――対物ライフルっぽいマジカルウェポンを取り出します。
配色はカーキベースでオリーブドラブのアクセントつき。軍服とか戦車みたいな色ね。
高密度エネルギー弾を魔法的な原理で加速させ、超光速で無限連射可能。もちろん反動も無ければ重さも片手で持てるぐらい。エネルギーの供給源は私。
火薬を使った銃のように熱や煙を一切出さないから、先端さえ塞がっていなければ密閉状態でも使えます。だからこそのポヨンくん(透明なやつの名前)ですよ。
マジカルライフルを構えた状態でポヨンくんがゆっくり斜め上へ傾いて、竜の群れへロックオン。
私の視界に重ねて表示されたモニターには、その場で必要な情報だけを出すようにしてあります。
『距離三千五百から四千。そろそろ
「そうでなきゃ困るっていうか、こっちは10キロ先でも余裕で狙えたけど……ねっ!」
ヒュボボボボボッ! ヒュボボボボボッ! ヒュボボボボボッ!
5連射で竜一体につき5つの急所へ撃ち込んで確実に仕留め、先頭の三体を片付ける。
貫通させて巻き添えで倒すのは面白くないから、命中したら竜の内部で循環しているエネルギーの経路を破壊して
精密機械に過剰な電気を流して壊しちゃうように、喰らった相手は訳が分からないまんま二度と起きられないのだ。
悪いけど、欲に目がくらんで横取りなんかしようとするヤツらに容赦はしない。せいぜい私の命中精度を上げる実験台になってちょうだいな。ふふふ……。
『同時に五つの場所を射抜くのなら、無数の弾を生み出して一斉に放てば良かろう?』
「こういうのは
『
イザミンに呆れられようがなんだろうが、絶対的に足りない経験は数をこなさなきゃどうにもなんない。
竜系の頂点に生まれたんなら、ちょっとでも舐められたらそこで終わり。あくまで間接的とはいえども、私にとっては聖龍イザミンの大看板に直接泥を塗るのと同じこと。
もう私はぬるま湯にどっぷり浸かっていた前世の地味女じゃないんだ。カミサマに正面切ってケンカを売ろうとしているやつが、今更ささいな障害ぐらいでガタガタ言ってらんないっての。
『『『逃がさねぇぞオマエら!
まさに龍の咆哮。内なるエネルギーを波動に変えて、可能な限りの広範囲に届くようにありったけの高出力で ”宣戦布告” をブチかます(竜語で)。
至近距離で特殊音波を喰らった何体かの竜は、自身で張ったであろう障壁を突き抜けて感覚器官をやられたのか、失速して地面へ墜ちていこうとする。
「誰が勝手にリタイヤして良いっつった?」
ポヨンくんの周囲にレーザーもどきポッドを6つ同時展開。並列思考で
引き続き向かってくる根性が残っている相手には、私直々のマジカルライフルで原型を保ったまま撃ち落としていく。
どっちにせよ逃さないけど、素材としてこっちの利益になってもらわにゃあイカンのよ、キミたちにはね。
ぶった斬ったヤツはパーツごとにバラ売りするグループ、まともに向かってきたのには最低限の敬意を表して、丸ごとお買い上げしてもらいます。
覚悟しろ、周辺のギルドや関係各位の皆々様方。しばらくはドラゴン素材の市場をてんやわんやの大騒ぎにさせてやりますよ。
『中の下とは云え、ヒトにはそれなりの価値となろうものだが……これでは大暴落ではあらんかの?』
あ、それじゃあダメじゃん……。
後日、
もちろんキッチリ相場分に上乗せした手数料は管理委託費の名目で受け取ってもらってるんだから、素材の売り上げと合わせれば結構な儲けになってるんだろうし。
まぁまぁな手間を差し引いたとしても、これでおあいこでしょ?
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