第25話 時には、ちょっと昔のお話を。
ここでちょっと唐突ですが、前世のお話をしようかと。
私の一番古い記憶は、歩けるようになったぐらいの私が家から近い場所にある河川敷で、両手を広げておいでおいでをする母親のところまでトコトコ歩いて行こうとしている瞬間の映像。
高校生の時にこの記憶について聞いてみたら、小さい頃にそんなトコへは行ってないわよって不思議そうに返されて、どゆこと? となりました(真相はもはや闇の中……)。
そこからの思い出はモヤっとしていて、特に小学校に入ってから3年生ぐらいまでの記憶がすっぽりと抜け落ちている。
これは3年生のどこかのタイミングで、公園の遊具から落っこちて頭を打ったのが原因かな?
その時はちょっとタンコブができたぐらいで特に後遺症とかは無かった……と思いたい。
中学校から先は、ずっと地味子さんのターン。人付き合いは苦手でも得意でもなく、それなりに友達も……親友はいました。3人だけね。
あの子たちとは親にも言えないような話も普通にできて。年末には集まって朝までゆるゆると過ごしてから、丘の上にある神社へ初日の出を観に行くっていうのを何回かやったっけ。
大学生の頃には進学先が違ったせいで自然と会わなくなっちゃったんだけど、今はどうしてるんだろうか。もう二度と会えないんだよなぁ……。
高校に入ると大きめの図書室があって、そんなに人も来ないのが良かったのか長々と過ごしていたりしていたら成り行きで図書委員に。
そこでも黙々と地味な活動しかやってなかったはずなのに、いつの間にか図書委員長になってたのは不思議だった。他人をまとめて引っ張っていくようには自分でも思えなかったんだけど。私の何が良かったんだろうか?
昔から動き回って遊ぶというよりは、公園の隅っこで草木が風に揺れるさまをじぃっと見ていたら夕方になっていたような性格ではあったけれど、高校にもなるとそれが一つのことにひたすら集中すると周りが見えなくなるというレベルにまでなっていて。
休みの日にとある事が気になって調べ始めたら、次々と関連する物事に興味が移り変わっていって、母親が夕食を早く食べに来なさいと呼びに来るまで時間が経っていたことに気づかなかった、なんて時もありました。
大学生になってバイトなんかで自由にできるお金と時間の余裕が増えると、何かに深くハマって凝ったことをやりだすというクセがついちゃって、そのひとつがこうやっている間にも手を動かし作り続けている、料理(今も並列思考で複数同時進行なんて事をやっております)。
コンビニで美味しそうと思った新作のスイーツだったり、よく出来ていると思った冷凍食品のパッケージに書いてある原材料名を食べたあとで見たりして、どうやったら再現できるのか、コスト的にこの部分で妥協したんだろうから、これを入れればもっと良くなるんじゃないかとか。
そうなったらもう気になっちゃって。最初は食品工場の製造工程を取材した動画を観始めて、最終的には工場見学でも見られない裏側を体感したくなって――
地元にそこそこな規模の食品製造会社があったから、どうやったら私でもこの会社に入れるだろうかと思案した結果、今から直接製造現場や研究開発職を目指すよりも、性格的に合っていそうな事務作業方面を狙ったほうが可能性も上がりそうだな、と簿記や秘書検定もそれなりなものを取得した結果、めでたく無事採用。
さぁいざゆけ、ついに現場へGO! と思ったら……。
前世の私は果たして製造現場を観られたんだろうか? 本職の事務の方はやっていたらしい記憶が残っているけれど。
以上、ちょっとした誰かの人生が終わるまでのお話でしたとさ。
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