第13話 どうやら、ダメだったらしい。
聖龍イザミンの知識の泉調べによると、そもそもこの世界のフシギパワーってやつは本来発動させるのにいくつかの手間がかかるものらしい。
最も簡単なものは使い捨ての魔道具やらなんかのインスタント。体内に蓄積されたエネルギーを直接注げばあらフシギ、即座に火が出たり水が出たり光ったりする。エネルギーさえ込められれば誰でも使えるけれど、動作が単純。作りが甘いと暴発して軽く吹っ飛ばされます。
2段階目は定型文による詠唱発動。これにはセンスが必要で、属性によって向き不向きがある。爆炎を出したり氷を飛ばしたりプチ雷を落としたり。集中しないといけないから無防備になるし、時間がかかる。
3段階目は詠唱発動の高威力・大規模化。体内のエネルギーだけでは追いつかなくなるから、周囲のエネルギーを使うか魔石のような高純度のエネルギー体を用意する、複数人で分担する、人柱でゴニョゴニョするやら色々。広範囲に強力な影響を与えられるかわりに長ったらしくて、ひたすら時間がかかる。失敗すると集まったエネルギーに潰されてジ・エンド。
4段階目は圧縮詠唱。特殊な専用言語を使って全体の文字数を減らす方法。発動時間を短縮できるのが強み。雑音みたいな独特の発音を完璧にこなす強靭な精神力と経験が必要。一瞬でエネルギーを持っていかれるので制御が難しく、使い方を間違えれば自殺行為です。長々詠唱するのにはこういう事故を防ぐストッパーの役目もあったり。おかしいなと思ったら途中で止められるからね(副作用や反動はあっても、死ぬよりはマシ)。
5段階目が無詠唱。どういう風に何をしたいか、させるかを全部イメージでやってエネルギーを投入、任意のタイミングで発動する。エネルギー源は内部でも外部でもお好きにどうぞ。私がやったみたいに自分に効果を与えたり、外に向けて放ったりと設計次第で自由自在。発動時間をほぼゼロに出来るけど、当然ながら難易度がアホみたいに高い。私の場合は私の魂と一体化しているイザミンの知識と経験が補助をしていたようで。そりゃそうか。
この無詠唱にもレベルがあって、複雑で大がかりな事をやろうとすれば当然、外部に対する働きかけが必要になってくる場面も出てくる。例えば龍脈に干渉して流れを変えたり、龍脈内にエネルギーを飛ばして双方向でやり取りをしたり。
物を届けるには名前と住所(場所)が必要だし、通話をするにはお互いの番号とか特定できる情報を知っていないといけない。
それと同じように、私が誰であるかをハッキリさせていないんじゃあ、誰もまともに相手をしてくれないでしょ? とさっきから彼女は言っていたわけです。
「あ~、ナニナニのどこそこ方式」
『えらく珍妙な言い回しだのう。まあ、判っておるならそれでよいが。 ……名が有る事は、
うわぁ。そんな責任重大緊急案件、後回しにできないやつぅ……。
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