第10話 そんなもん、断固拒否だ!

 

 

「させないよ、そんなこと」


 だってムカつくじゃんか。理屈では分かるけどさ。


 私の身体の一部は聖龍イザミンの成分で出来ている。だから感情が彼女寄りに引っ張られているのは確かだ。


 私とイザミンは要素を同じくした姉妹であり、彼女はこの世界における母の片割れだ。もう片方はカミサマ(一応女神らしい)って事になるんだけど。


『……其方そなたも判っておろう? 龍脈となった妾にはもう聖龍の残滓すら残っておらん。元より緩やかに削り取られて消え行く運命さだめ。それが早まっただけの事よ』


 それもカミサマの計算。私にどうにもならないと思わせて、追い込む為のお膳立てなのだ。


 でもねぇ……。


「……だったら一言でもいいから、直接姿を見せるぐらいするのが筋ってモンでしょ。遠くからメモ書きひとつで納得しろって、そんなんじゃ他人ひとなんて気分良く動かないっつうの!」


 こちとらヨソの世界にまで来てるんだよ? そっちが福利厚生ガン無視して働かせる気なら、こちらも当然に最低限の権利を行使します!


「決めた。イザミンは消させない。龍脈は維持する。私は絶対、直接イザミンの身代わりにはならない!」


 決定です。私は姉であり母でもあるイザミンを救う。そして、この地に縛り付けられて動けない生活なんざ、断固拒否だ!




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 ……場所は変わって、ここはこの世界の何処かにある天上の空間。


 真っ白なカフェテーブルに色とりどりのお茶菓子が並べられ、上品な意匠の透明なティーポットと組み合わされたティーカップには、紫色のハーブティーがゆらゆらと湯気を立ち上らせている。


 目の前の空間に展開された遠見の窓には、とある森の中の泉の前で新たな決意に燃える銀灰色の小さな子猫と、その傍でオロオロしながら様子を見ている可愛らしい白龍の姿が。



「よしよし、食いついたわね。 ……それなりに険しい道だけれど、たーんと頑張りなさいな。おチビちゃんたち♪」

 

 

 

 

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