第9話 させないよ、そんなこと。

 

 

「……お~い、イザミン戻ってこ~い」


『はっ!? ………こほん。其方そなたが妾を継ぐ存在である事は、今の妾の姿を見れば明白じゃ。現に其方の躰には、妾の残滓――大地に残されておった妾の記憶や知識の総てと、肉体を形作っていたの一部が含まれておる』


 何事もなかったように始めたな……。まぁいいか。


 命の息吹をコントロールする龍脈システム(イザミン)の中身を引き継ぎ、一部を流用して頭脳を新しくした新型が、私。


『神の狙いは、動けぬ妾に代わって滞った各地の龍脈の流れを其方という新しい駒を使って正そうというものだろう。そしてそれが首尾良く行けばいずれは……』


 うん、そういう事なんだろうなとは薄々。


 長年稼働し続けたイザミンにはいろいろな部分にが来てしまっている。生命が巡り続けている以上このシステムを止める訳にはいかず、不具合が出てから対応したのでは間に合わない。


 そこで私という次世代を生み出して監督付きで試験運用し、上手くいったら古くなったイザミンごとそっくり入れ替えてやろう、とカミサマは思っているのだ。


 ハタから見れば酷い話のようにも思えるけれど、この世界を運営しているカミサマにしてみれば、古くなった設備を取り替える程度のこと。会社と違って失敗したらやり直しはきかないんだもの。私だって同じ立場ならそうするよ、きっと。


 イザミンが言い淀んでいるのは、ヨソから来た私へこの世界の為に犠牲になれと、その覚悟を決めさせる役目をカミサマが勝手に押し付けてきた事に怒っているからなんだと思う。



「させないよ、そんなこと」

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る